内容説明
礫投げが得意な若者・弥七は、陰と呼ばれる貧しい集落で、地を這うように生きてきた。あるとき、図らずも自らの礫で他人の命を奪ってしまったため、元盗賊のねずみという男とともに外の世界へ飛び出す。やがて弥七は、作事集団の黒鍬衆の一員として尾張国の砦造りに関わり、そこに生きがいを見出すようになる。だが、その砦に松平元康、のちの天下人・徳川家康が攻めてきたことで、弥七の運命はまたも大きく動きはじめた―アルファポリス第6回歴史・時代小説大賞特別賞受賞作。
著者等紹介
早川隆[ハヤカワタカシ]
広島県出身、インターネットベンチャー勤務の傍ら、2019年より執筆活動を開始。アルファポリス第6回歴史・時代小説大賞の特別賞を受賞した「礫」を「敵は家康」に改題し、出版デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
TAMA
10
分厚さにひるみつつ、聞き覚えのある地名に出掛けた場所についつい。「何の関係があるのこの人?」歴史に名の残らぬ人たちの日々と信長秀吉家康、名古屋で云う『三英傑』にそのころの庶民はそんな感じで見ているかもなと。黒鍬衆もなるほどな。やっと理解した。大高緑地(今は住宅やイオンが)丸根。高架から見れば確かに平野に丘。桶狭間のキセキ。敵は家康だったのか?そこに至るまでのあれやこれや、そうかもなあ、とすごく楽しませていただきました2022/05/03
Abercrombie
3
桶狭間前夜、丸根砦に籠る黒鍬者の若者VS若き家康ってことで、「塞王の楯」みたいな話かと思って手にとってみたんだけど…、待っていたのは泥臭く殺伐としたリアル戦国。痛快さも爽やかさもなく、生きるため必死に足掻く主人公の姿は、読んでてひたすら辛い。救いのない結末にもがっかりだ。2022/04/20
amegahare
1
とてもおもしろかったので、一気に夢中で読みました!読書の醍醐味を堪能させて頂いた歴史・時代小説です。不遇な環境におかれた少年が、石投げの才能を生かして、血生臭い戦国の世を泥臭く懸命に生き抜いていく姿に心を打たれました。砦作りに関わることで、何者でもない少年の停滞した日常が鮮やかなに塗り変わっていく様子をワクワクしながら読みました。戦国の世に名を馳せた武将達の登場には心躍りました。若き日の信長・秀吉・家康に加えて、歴史の記録に残ることが無いであろう数多の人々の息遣いを感じることができる小説でした。素晴らしい2024/11/10
ぱぱ39
0
素直なストーリーで読みやすい。フィクションの味付けが強い歴史小説。2022/03/12
HASE, Moto
0
家康がまだ松平元康を名乗っていた、今川方の若武者だった頃。桶狭間の合戦の前夜、元康は織田方の丸根砦を攻めた。 丸根砦を築いたのは、地元・尾張に根付いた屈強な作事集団の黒鍬衆。その一団の中に、はぐれ者が細々と住まう「陰」出身の若者、弥七がいた。 おもしろかったー! 少年の成長譚であり、戦う人々の物語でもあり、戦国時代の一場面を活写する作品でもある。尾張の郷土史が垣間見えて、土と潮と血と汗の匂いがする。 人々の生き様や運命が丸根砦で絡まり合っていくのがダイナミック。 とてもおもしろかったです。2022/03/13