内容説明
司馬遼太郎は、日本の近代のルーツを鎌倉幕府の誕生に求めた。封建制は進歩の力を内包し、西欧近代へも親和的な統治システムだったからだ。こうした中世を経験しなかったアジアの国々は立ち遅れた。一方で、日本人が長く育んできた道徳観や規範意識は、進歩と安定を調和させ、近代化を支えた。我々がそうした伝統の下にあることは、現代の日本が、世界中でも稀に見る、豊かで秩序ある社会を実現させていることからも明らかである。しかし、その良き伝統は一時期失われ、太平洋戦争に向かう異胎の時代を生んだ。世界の動きに耳目を塞ぎ、合理的に考えることを怠れば、国は容易に危機に瀕する、それが、司馬のもう一方のメッセージでもあった。世界の組合員としての振る舞い、イデオロギーの対立の克服、歴史認識問題など、司馬の声を聞きながら、日本のこれから歩むべき道について考えてみる。
目次
第1部 日本とは、日本人とは(日本という国のかたち;日本人と公共心)
第2部 現代の日本と日本人(世界の組合員として;イデオロギーと民主制)
第3章 歴史認識問題と相互理解(日韓関係と歴史認識問題;慰安婦問題について;日韓の相互理解に向けて;日中関係と歴史認識問題;日中の相互理解に向けて;安倍総理の戦後七十年談話と我々世代の責任)
別添 遙かなるニューギニア―伯父の闘った太平洋戦争