ＳＦ小説論講義―ＳＦが現実に追い越されたって本当ですか？

青木 敬士【著】

江古田文学会（2016/11発売）

• サイズ B6判／ページ数 159p／高さ 19cm
• 商品コード 9784434227196
• NDC分類 901.3
• Cコード C0095

内容説明

ＳＦは、ただ自由に想像力の翼を広げているわけではなく、科学的探求によって見えてくる宇宙の法則を下敷きとした文学であり、また一方では「人間ならざる存在」を仮定することによって、人類がいかにヒトの肉体感覚にとらわれた見方で世界を把握しているかを明らかにする文学でもあります。それが芸術におけるジャンルを越えた創作のヒントとなるように展開していくのが、日本大学芸術学部で開講されている「ＳＦ小説論」ここには「○○はＳＦじゃない」という狭量な選別と排除は存在しません。周囲の環境や、日常的に手にしているアイテムにもＳＦスピリットは息づいています。そういった数々の鉱脈に光をあて、ごくナチュラルに、ＳＦ小説が描いてきた魅惑的な世界へいざなうことができれば幸いです。

目次

はじめに―「ＳＦ小説を一冊も読ませずに展開するＳＦ小説論」とは
第１講　言語で世界を征服する方法
第２講　新海誠とセカイ系―美しき背景を背負った「対話」の消滅
第３講　ルールが連鎖させる物語作法―小川一水『ギャルナフカの迷宮』
第４講　ロボットらしさ・人間らしさ
ＳＦ小説論講義　板書アーカイブス

著者等紹介

青木敬士［アオキケイシ］
１９７０年北海道生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒。日本大学芸術学部文芸学科准教授。印刷された「紙面」と表示される「画面」の二面においてテキスト表現の進化を研究するかたわら、仮想キャラクターの空間投影を価格破壊する「アミッドスクリーン」の考案と普及により、第一回ニコニコ学会βシンポジウムにてクウジット賞を受賞。ボーカロイド界隈では「アミッドＰ」の名で知られている（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[コットン]

日本大学芸術学部の講義を元にした本で４講あるが、その内の初め『言語で世界を征服する方法』がマッキントッシュのTVCMの話があり、YouTubeを観るとなるほどって感じられる。ニコ動などの話もあり、学生に身近な話題で話を進めているが、ウィトゲンシュタインが出てきたりする辺りはくだけた感じになりすぎない配慮もあるのかな?。

2023/09/06

[シャル]

ＳＦとは何か。それを考えていく講義を書籍にして収録した一冊。様々な授業のテーマを元に、現実とＳＦ、ＳＦという創作について、そのテーマにあった作品を照らし合わせながら考えていく。１９８４のニュースピークとニコニコ動画の制約が作る世界。セカイ系とそこにあるコミュニケーションのかたち。テーマではなくルールがもたらす物語の構築と開放。ロボットの条件から見る『考える』ということ。それらの講義テーマによって、ＳＦもまた『人の造り出したフィクション』であり、それが何を描こうとしているのかを考えさせられる。

2016/12/05

[たんかともま]

講義の板書を忘れた生徒向けのような内容だが、噛み砕いた上で、固いSF小説でなく新海誠やニコニコ動画などを例に挙げながら解説するのがよかった。1984年をニコニコの字幕機能と関連させつつ、解説することでわかりやすく、いくつもの言い換えも分かりやすかった。また、ロボットと人間の考え方で、人間とロボットをどう区別するかに言及したり、物語を面白くする方法としてルールを設定することが挙げられていたのが、創作の手助けになる。一方で、板書はあまり必要性を感じなかった。これを文字に落とし込むのが本書の役割だった気がする。

2020/08/14

[たろーたん]

「自由」という言葉をなくすために、自由と対となる言葉を用意して（秩序）、それに「非」「否」「不」などとつけて自由を表す。つまり、この場合は、自由の代わりに「無秩序」と使おうってのがあって、「自由」の代わりに「無秩序」という言葉を使うようにすれば、確かに「自由」はなくなるだろうな、と思った。「ハイパーリアル、AVの方がマネされる本物になる。高度なシミュレーションが蔓延すると本物の価値が下がる。AV＝セックスのシミュレーション。リアルでの行為の反応がAVのようでないと自分がしている行為は偽物なのでは？」

2024/03/15