内容説明
被爆地、長崎…その浦上地区の歴史とそこに生きた被爆少女の半生の綴れ織り。ひたむきに生きた少女の記録は、国境を越えて、読む者に感動を与えずにはおかない。そして、真の平和をかなえる心を、力強く求めてやまない、魂の記録である。
著者等紹介
市川和広[イチカワカズヒロ]
昭和32年福岡県福岡市生まれ。平成14年会社役員を退任。退職後、自営業の傍ら執筆活動を始める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しいたけ
103
長崎版『この世界の片隅に』である。原爆の証言活動を続ける下平氏の証言をもとに、著者の「彼女の意思を受け継ぐ者の一人でありたい」との思いで書かれた力作。ピカ前の生活。戦争の影。友との語らい。ピカ後の絶望と死への恐怖を抱えた姉妹の生活。同じ敗戦の民から受ける被爆者としての差別。淡々と描かれるからこそ、理不尽に奪われた当たり前の幸せが胸に迫る。バラックで寒さに抱き合い、窓向こうの朝鮮人の母親が息子に歌う子守唄を聞きながら眠る姉妹。抜ける髪の毛。治らない傷口。伝えたいと願う人の祈りが、本の全部に溢れていた。2020/08/19