内容説明
1949年福島県松川で起きた列車転覆事件。20人の青年が逮捕され死刑や無期など宣告された。広津和郎は彼らの無実を証明しようと約5年にわたり「中央公論」に判決文批判を書きつづけた。調書や公判記録を綿密に調べ、被告や証人と裁判官・検察官・弁護士との質疑応答を一つ一つ検証するという実証的な方法は今もなお有効な手段である。重い内容、鋭い筆法ながら推理小説を読むような面白さをもそなえている。「公正な裁判」を願い「裁判は国民のもの」と言いつづけた広津和郎の裁判批判の歴史的書!!漢字の一部をひらがなにし、くわしい年表・解説をつけ、若い世代にも読みやすく編集。
目次
事件の概要
「仮定」と「可能性」の裁判
赤間自白の問題
自白と事実の食違い
謀議に出たのは幽霊か
玉川警視等の証言
高橋被告のアリバイ
高橋被告の身体障碍
証言を歪曲した判定
その夜本田被告は酔っていた〔ほか〕
著者等紹介
廣津和郎[ヒロツカズオ]
明治24年(1891)作家広津柳浪の次男として東京牛込に生れる。早稲田大学在学中に舟木重雄、葛西善蔵らと「奇蹟」を創刊。大正6年(1917)「神経病時代」を発表し以後小説評論等はば広く活躍する。昭和27年(1952)から松川事件に関心を抱き昭和29(1954)年4月から昭和33年(1958)10月まで「中央公論」誌上で4年7ヶ月にわたり松川裁判第二審判決文を詳細に批判する。公判傍聴・現地調査や全国を講演してまわるなど昭和38年(1963)の無罪判決まで被告らを支援しつづけた。昭和43年(1968)逝去。享年76歳(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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