出版社内容情報
プロローグ 「一つの想念が日本列島を覆っている」 から始まる本書は、日本人の無意識の精神と日本の歴史をたどって、現代の日本と日本人の原像を解明している。 日本人の胸には、何か得体の知れないもやもやとした苛立ちと閉塞間がわだかまっている。本書ではその原因を有史以来の日本人の精神構造によるものと認識し、その現状を日本の二千年の歴史における行き詰まりの時と位置付ける。 その閉塞感の理由を、今日の日本が究極の本音社会と化して、日本人が自分とは何者か分からなくなって来ているからであると分析する。物事の混乱にはその原因が分からなければ対処できず、原因が分かれば自ら道は開ける。現在の日本はその原因が分からぬままに迷走を続け、自己を知ることもなく対処の道を選んでいる。その姿勢は、「自己仮想の世界観」によって諸々の問題を「有って無きが如く見做し」、「台風一過の心情」によって「波風を立てることを避け」て、「現状維持」を至上課題として問題を先送りすることから成り立っている。だがこの姿勢にはそうなってしまう原因があり、本書で述べる視点によって現代日本の混迷の実相が認識され、対処の道も把握することが出来ると総括する。 古代から現代まで一貫して日本人が抱き続け、日本の社会構造を作り上げてきた無意識の想念とは、本書の表題となっている「鎖国の精神」である。これを日本人の原点としての精神と言い、鎖国を見えざる日本の国是と提示する。そしてこの「誰にも意識されていない精神」が紡ぎ出す日本の歴史の流れと日本社会の諸々の現象を跡付けて、現代の日本を呪縛する根源を明らかにしている。 日本人の精神と日本の歴史をたどって、現代の日本を知ることができる。日々の生活に生きているこの想念の詳細を述べ、さらに見えない日本文明の意味と日本の未来像にも言及する。それがここに平易に描き出された現代日本の解剖図である。古代に発して現代日本の様相に凝縮している流れの記述は、現代の「日本解体新書」と言える。 しかも本書では、このことは日本人であれば誰しも何となく感知しており、現実との符号に合点できるはずのことだと述べる。だが一方で、「平穏さと繁栄に満ちた現代の日本社会が、そのように壮大な有史以来の見えない想念に支配されているなどと誰がまともに信じられようか」とも言う。この壮大な物語によって、「日本を形づくり、日本人を支配するものとは何か」を御一考されたい。また物事を論じるということ、推論によって物事の本質を分析することの醍醐味をご堪能あれ。
序 章 日本の心髄
有史以来の想念 日本の自己矛盾 日本の無意識 解題 自己の視
点
第1章 日本の現状
世界の混迷と日本の行き詰まり 三竦みの日本の現状 無意識の願
望が生む選択 日本の目に見えぬ呪縛 国初以来の思考・行動様式
日本人の年齢 庇護の翼 偽りの独立 依存者 自立せざる者 日
本の自立 実情の認識 危機の不足 対外関係と外交と戦争 言葉
と実態の乖離 国家の変質と国民の変貌 社会規範の崩壊
第2章 日本の淵源
日本の国是と精神の起源 同時代の背景 歴史の真相 日本の精神
の転回と歴史の断絶 鎖国と島国根性 本来の日本人 島国根性と
いう言葉 大陸国家と島国 島国気質 本来の日本固有の気質 国
策としての鎖国 管理された開国 無意識の鎖国 江戸期の鎖国
戦国期の日本史上における意味 江戸期の位置付け 国禁と海外進
出の系譜 2000年の背景 日本の中華思想 日本の正当性と鬱
屈
第3章 日本的鎖国の精神
異人種の混在 独特な日本の鎖国態様 他の国の鎖国態様 鎖国以 前の国内状況
日本の自己解放 日本的な民族淘汰 表と裏の共存
和の精神 並存・調和の伝統と虐殺・絶滅の伝統 新旧並存の伝統
日本の特殊性 日本文明の形成
第4章 日本の社会構造
無意識の本音 本音の発想と道具としての建前 建前と理想 純粋
な本音社会 本音の前提 対内関係と対外関係 雰囲気・空気とい
う日本人支配の手法 合理的な社会と談合 下が上を制する社会
日本の社会構造の由来 論理的な思考 論理を阻む「和」の精神
道理と調和 性善と性悪 本音と理想 本気というもの 日本人の
恋愛 日本の道徳律 隠蔽体質 隠蔽の漏洩 外部の発想と血の導
入 現実の対応
第5章 現代日本の深層
日本の視点 明治と現代 安住の地 日本の対外関係と隣国関係
対米関係 戦後日本の深層 現実認識の欠如 戦後社会の実態
戦後日本の自己否定の論理 自己否定と靖国の論理 敗戦と戦後世
代 現状の克服
第6章 日本の行方
社会の再編 失われる日本の美風 自己認識と決断 日本の選択
要旨 日本の変革日本の未来像
第7章 日本の諸相
日本の芸能・風俗 日本の文学 日本の宗教 日本の思想 日本の
名字 日本の国柄 日本の経済 日本の官支配体制 日本の外国語
能力 日本の歴史観
あとがき
内容説明
日本人を支配する二千年来の無意識の精神を解剖し、現代の日本を呪縛する根源を明らかにする。初めての世界が開く日本解体新書。日々の生活に生きている、視えざる日本文明の原点が見えてくる一書。
目次
序章 日本の心髄
第1章 日本の現状
第2章 日本の淵源
第3章 日本的鎖国の精神
第4章 日本の社会構造
第5章 現代日本の深層
第6章 日本の行方
第7章 日本の諸相
著者等紹介
長澤寛行[ナガサワヒロユキ]
富山中部高校、東北大学法学部卒、富山県富山市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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