内容説明
生きるということ、そして切れめのない命のつながりをみつめて―ふかい思いをこめた名作二編。
著者等紹介
新美南吉[ニイミナンキチ]
1913年~1943年。愛知県生まれ。雑誌『赤い取り』に「ごん狐」を初め多くの童謡・童話を発表。他に少年小説、民話的メルヘン等、優れた創作活動を展開したが、二十九歳で早逝
井上ゆかり[イノウエユカリ]
1986年、東京芸術大学美術学部芸術学科卒業。卒業後も制作活動を続け、1993年には個展を開く
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モリー
69
二話収録された絵本。一話目は「でんでんむしのかなしみ」。背中の殻の中いっぱい詰まった悲しみを、誰もが背負って生きている。人生哲学のような寓話を子供向けに書いた新美南吉さんの、子供を軽んじない姿勢が伺える作品です。収録されたもう一話「きょねんの木」は初読みでした。どちらも子供の記憶の奥底に沈み込み、時々その記憶が蘇るような深みのあるお話です。井上ゆかりさんの絵にも非常に惹かれました。2020/02/23
ちえ
37
「かなしみは だれでも もっているのだ。わたしばかりではないのだ。わたしは わたしの かなしみを こらえて いかなきゃならない」やはりこの言葉は心に染みる。小鳥が仲良しの木を探しに行く『きょねんの木』も、小鳥の木への思いが伝わってくる。2023/06/24
森の三時
31
【でんでんむしのかなしみ】「わたしは いままで うっかりして いたけれど わたしの せなかの からの なかには かなしみが いっぱい つまって いるでは ないか」、どきりとする、でんでんむしのつぶやきに私の胸の中は騒ぎだすけれど、読み終えたとき、でんでんむしと同じく、あることに気づかされます。【きょねんの木】木と小鳥は仲良し。大切なものが去ったとしても、姿形を変えてそこにあったのかな。炎は魂に似ていますものね。2作品とも、新美さんの厳粛なメッセージに井上さんの幻想的な絵が添えられ、胸に響きました。2018/08/11
ひほ
29
自分だけが不幸なんではないんだよね。みんな悲しみをこらえながら生きているんだよね。2015/05/26
ふじ
24
もう哲学書かと思ってしまう。名作童話は。でんでんむしが、ある日「自分のからのなかには悲しみがいっぱいつまっている」と気づき、周囲に打ち明ける。するとみんなは…。気づけたら、きっと昨日までと世界の見え方は変わる。大人になってもこの本が心に残っている、と言った人がもれなく心優しい人で、無意識のうちに本は人を育むのだな…と思わされました。2019/05/02