内容説明
近年における実証的な研究も含め、この二百年以上にもわたるモーツァルト研究の蓄積を踏まえて曇りのない目でモーツァルトの生涯を眺めれば、「神童時代」でも「晩年」でもない、その間にある「青春」が、魅力のあるテーマとして立ち現れてくる。モーツァルトは、才能ある若いミュージシャンとして、また、野心を持ったひとりの青年として、どのような青春を送ったのか。いろいろな意味で時代の転換点にあった十八世紀後半の貴族社会の中で、若きモーツァルトは、何を感じ、何を考え、何を経験したのか。そして青春の日々は、そのときどきの作品にどのように反映されているのか。コンスタンツェとの結婚によって、モーツァルトは、父レオポルトから精神的に独立し、新しい人生のステージを迎える。そして多くの人生と同じく、結婚によってモーツァルトの青春は終わる。本書が扱うのは、モーツァルトの青春のいわば前編―性と自我意識にめざめる十代前半から、二十一歳になったモーツァルトが大司教に辞表を提出して旅立つまでの八年弱である。
目次
第1章 イタリアへ
第2章 少年オペラ作曲家
第3章 宗教国家
第4章 ウィーン―この不可思議な都
第5章 宮廷音楽家
第6章 ミュンヘン
第7章 旅立ち
著者等紹介
久元祐子[ヒサモトユウコ]
ピアニスト。東京芸術大学音楽学部器楽科(ピアノ専攻)を経て、同大学院修士課程を修了。ベートーヴェン『テレーゼ』『ワルトシュタイン』のCDでは「どこからどう考えても最高のベートーヴェン演奏」(グラモフォン)、「名盤ひしめく中、久元なりの個性を刻むことに成功」(日経新聞)と絶賛されるなど、芸術性の高い演奏活動を展開。内外でのリサイタル、オーケストラとの共演のほか、NHK‐FMリサイタル、NHK「ラジオ深夜便」などの放送番組にも出演。モーツァルトのレクチャーリサイタルは朝日新聞「天声人語」に紹介されるなど、モーツァルトの演奏、研究で定評がある
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