内容説明
平氏が滅亡し鎌倉幕府もまだ成立していない混沌の時代に多感な十代をすごした一郎―後の京都高山寺の開祖明恵上人―の物語。八歳で父母と死別し九歳で高雄に入山するという特異な境遇、「見る」ことについての驚くべき記憶能力と過敏な感性は、彼の人格を狂気へと崩壊させてゆく危うさをはらんでいた。それらを宗教的世界へと昇華させたものは、純粋でひたむきな信仰心と、彼を愛し理解しようとする同じ世代の若者たちとの激しく、そして悲しいふれ合いだった。狂気と信仰のはざまで揺れる未成熟な精神という普遍的なテーマに挑戦した長編小説。
著者等紹介
東山彰[ヒガシヤマアキラ]
1955年生まれ。大学教授などを経て作家活動にはいる
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