内容説明
枕元に記されたネームカードに目を遣る。西千葉九州男。これが私の名前である。西千葉駅で発見、保護された九州出身らしい記憶喪失の男。千葉行きの最終電車が出たホームに、切符も持たずウイスキー片手に倒れ込んでいた私。夢である事はわかっていた。私はひとり写真の中を浮遊していた。動きを忘れ時間が喪失したような世界に私だけが浮遊している。人といわず車といわず見通せる限りの町中の万物は停止している。無明２００１―終わりのない夢、それが死か。パーキンソン病という自己の病を客体化して「生と死」の極みから人間の原存在に迫る。背後から忍び寄る正体不明の恐怖。正気と狂気のシンメトリー。
著者等紹介
春藤弦［シュンドウゲン］
昭和１９年長崎県松浦市出身。４３年九州大学法学部卒、鉄鋼関連会社（東京）入社。５１年機械加工会社（九州）へ出向、現在に至る
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
