出版社内容情報
《内容》 研究とは何か.科学とは何か.
分子生物学の金字塔であるJacobとMonodのオペロン説
いま,生々しく語られるその失敗と成功の歴史
サイエンスにかかわる人すべてに必読の書
本書では,20世紀における分子生物学の金字塔のひとつとなったオペロン説が,仮説と実験(理論と実際)を繰り返しながら構築された過程,過去のオペロン研究における理想と現実,そして,オペロン説からの転写制御研究の現在と将来の行方が,三つの章に分けて書かれている.本書の特徴は,何といってもそれらの記述を通し科学的な論理構築の方法が,あるいは,研究を遂行するにあたってのさまざまな人間模様を通じた教訓が,そして,研究のあり方が多面的に描かれていることである.真核細胞,特に発生・分化をはじめとする一見華やかな現象論に眼を奪われている現代の多くの学生には,原核細胞における転写研究を勉強する時間も能力も,そして,たぶん熱意もそう多くは残っていないように思われる.本書は,その現状を補うかのように,オペロン説を中心に原核細胞の研究が要約され,しかも読みやすいように一つ一つの章が短くまとめられ,登場人物が生々しく描かれており,一気に読むことのできる興味深い一冊である.
《目次》
1. 研究開始から1978年に至るまでのlac系の研究史
1.1 NoahからPasteurへ:酵母における適応
1.2 枯草菌と大腸菌における適応
1.3 大腸菌lac系における変異株
1.4 lac系における誘導物質とパーミアーゼの発見
1.5 リプレッサーを介した負の制御
1.6 リプレッサーを介した負の制御に関するさらなる証拠
1.7 Jacob-Monod理論の金字塔
1.8 Jacob-Monod理論のわずかな欠点
1.9 LacリプレッサーとlファージCIリプレッサーの単離
1.10 0lac遺伝子のf80ファージもしくはlファージへの挿入
1.11 LacリプレッサーおよびlファージCIリプレッサーはオペレーターDNAに結合する
1.12 Lacリプレッサーのアミノ酸配列決定のための大量調製
1.13 リプレッサーのモジュール構造を示唆するlacI遺伝子における変異
1.14 lacI遺伝子に関するMillerの解析:エベレスト山登頂
1.15 CAPタンパク質を通しての正の制御
1.16 lacオペレーターの単離と塩基配列決定
1.17 化学的な手法によるDNA塩基配列決定法
1.18 抑制機構としての立体的な障害
1.19 lacオペレーターDNAの化学合成
1.20 ニトロセルロースに結合するLacリプレッサー-オペレーター複合体
1.21 タンパク質-DNA複合体のポリアクリルアミドゲル電気泳動
1.22 lacZ遺伝子の融合とlacZ遺伝子内での相補性
1.23 Lacパーミアーゼの単離
1.24 ひとつの時代のおわり
2. 誤った解釈
2.1 実験結果はときおり誤って解釈される
2.2 自己複製する遺伝子によって説明される適応
2.3 適応の化学反応論
2.4 LacリプレッサーはRNAである
2.5 オペレーターはRNAまたはタンパク質のいずれかである
2.6 Lacリプレッサーの単離
2.7 LacパーミアーゼとArgリプレッサーの単離
2.8 lacオペレーターは二回回転対称性であることの遺伝学的証明
2.9 Lacリプレッサーのコア領域がlacオペレーターに結合する
2.10 Lacリプレッサーはbシートを用いてlacオペレーターを認識する
2.11 p-へリックスがlacオペレーターのヘアピンループ構造に結合する
2.12 lacオペレーター塩基配列の予想
2.13 Lacリプレッサー-オペレーター相互作用の化学反応論
2.14 lacO2に結合したLacリプレッサーは効果的な障害物として働く
2.15 副オペレーターは抑制において無視できる
2.16 CAPタンパク質はlファージCIリプレッサーのように転写を促進する
2.17 対称性の落とし穴の中で
2.18 CAPタンパク質-DNA複合体:二つの提案
2.19 Camp内のアデニンはDNAに結合する
2.20 b-ガラクトシダーゼの構造
2.21 ラマルクからCairnsへ
2.22 DNA塩基配列の解析:20世紀ではなく
2.23 タンパク質のスプライシング
2.24 lacO1-リプレッサー-lacO2ループ
3. Lacオペロン -美と効率のパラダイム-
3.1 新しい展望
3.2 いくつかの数字と概念
3.3 CAPタンパク質によるlacプロモーターの活性化
3.4 Lacリプレッサーによるlacプロモーターの抑制
3.5 b-ガラクトシダーゼ,ラクトースパーミアーゼとトランスアセチラーゼ
3.6 道具としてのlac系
3.7 lac系から何が学べるか
3.8 展望
内容説明
本書では、20世紀における分子生物学の金字塔のひとつとなったオペロン説が、仮説と実験(理論と実際)を繰り返しながら構築された過程、過去のオペロン研究における理想と現実、そして、オペロン説からの転写制御研究の現在と将来の行方が書かれている。
目次
1 研究開始から1978年に至るまでのlac系の研究史(NoahからPasteurへ:酵母における適応;枯草菌と大腸菌における適応;大腸菌lac系における変異株 ほか)
2 誤った解釈(実験結果はときおり誤って解釈される;自己複製する遺伝子によって説明される適応;適応の化学反応論 ほか)
3 lacオペロン―美と効率のパラダイム(新しい展望;いくつかの数字と概念;CAPタンパク質によるlacプロモーターの活性化 ほか)
著者等紹介
堀越正美[ホリコシマサミ]
1956年群馬県生まれ。1975年群馬県立高崎高等学校卒。1980年東京大学薬学部卒。1985年東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了、薬学博士。米国ロックフェラー大学博士研究員。1989年米国ロックフェラー大学助教授。1992年東京大学応用微生物研究所助教授。1993年東京大学分子細胞生物学研究所助教授。1997年科学技術振興事業団堀越ジーンセレクタープロジェクト総括責任者(兼任)。専門は遺伝子発現制御
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。