内容説明
英国が生んだ整数論の巨匠ハーディが率直明快に数学観を論じた名篇『ある数学者の弁明』と、友人スノーがその栄光と悲劇を描いた『ハーディの思い出』の2篇を収録。インドの無名の若者ラマヌジャンが、ハーディによって初めて天才数学者として開花するエピソードも赤裸々に綴られている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
jjm
5
集団遺伝学のハーディー・ワインベルクの法則で有名なハーディーの著書。名著と言われているらしい。TVで夭逝の天才数学者ラマヌジャンの話しを観て、その師がハーディーであったことを知る。数学は数学そのものの為に追求されるべきという考えのようだ。ラマヌジャンは話しだけ聞いていると伝説的であり、魅力的ではあるが、他者が(今でも)理解できない点でアインシュタインやガロアのような天才とは異なる場所にいた人なのだろうと思う。2020/06/03
人生ゴルディアス
2
『放浪の天才数学者エルデシュ』にて言及があったので。著者は百年以上前に生れたヴィクトリア朝時代に育ったパブリック・スクール出のイギリス数学者だ。つまり、傲慢なほどの高潔さ、無謀なほどの勇気、呆れるほどの無邪気さの権化とでも見ておけば大して間違いはないだろう。それ故に、功成り名を遂げ、老いてもなお肉体的に活発だった人間が、肉体的よりも先に頭脳的に人生が終わったしまったことを自覚し、生涯を振り返るとき、イギリス的皮肉の精神ですら覆い隠せぬほどの純粋な絶望を感じることができる。そして、エルデシュはそれを超克した2015/03/31
木村すらいむ
2
”ある数学者の生涯と弁明”は,情熱的な遺書のような本であった.最高の数学は美しいばかりでなく,serious なのであるという話は,岡潔 が”春宵十話”で述べた,鋭い喜びに似ていると感じた.次のあたりは激情的である.”数学は瞑想の学問ではなく,創造の学問である.創造する力や意欲を失ったら,誰も数学から慰めを引き出すことはできない.そして,これは数学者に思いのほか早くやってくる.それは悲しむべきことであるが,もしそうなれば,彼はどのみち重要ではなくなるし,彼のことを心配することは愚かなことである.”2014/04/17
村上 飛鳥
2
数学者が一度は抱くであろう疑問が弁明の中にかいてある。一回読んだだけでは文章の奥深さを理解できない。2013/12/05
松本佳彦
2
7年ぶり?の再読。20世紀前半に活躍したイギリスの数学者ハーディが一般読者に向けて「数学研究の価値」や「数学者の人生の意味」を語る前半部「ある数学者の弁明」と、それを年下の友人であるスノーが解説する後半部「ハーディの思い出」からなる。「弁明」は全編にわたりいかにもイギリス風の静謐さに包まれ、しかしその中でハーディは力強く、「数学者の考える創造というもの」を伝えようとする。「思い出」はハーディの人となりを描き、「弁明」の過激さをバランスするもので、こちらにはラマヌジャンとの関わりの話も出てきます。2013/04/27
-
- 和書
- 三体書道字典