内容説明
いまひそかなブームとなっている北前船―しかし、その名を知られているほどには、これまで実態の解明は十分とはいえなかった。本書は、北前船主たちの活動実態と、明治期以降の産業化に与えた影響を詳しく調べ、わかりやすく解説した。2訂増補版では、補章2「鉱山業と北前船主」を新たに加え、既存の章についても細部に亘り見直した。
目次
北前船はどのような船か
第1部 北海道と北前船主(場所請負制と北前船;北海道漁業と北前船;北海道の産業化と北前船主)
第2部 北の海へ向かった北前船主(東北地方の北前船主;越後・佐渡の北前船主;越中の北前船主 ほか)
第3部 北前船と取引した瀬戸内・畿内の廻船問屋(瀬戸内地方の廻船問屋;畿内地方の廻船問屋;汽船海運業と北前船主 ほか)
北前船と日本経済
著者等紹介
中西聡[ナカニシサトル]
1962年愛知県に生まれる。1993年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、東京大学社会科学研究所助手。1995年北海道大学経済学部助教授。1999年名古屋大学経済学部助教授。現在、慶應義塾大学経済学部教授、博士(経済学)。編著書、『海の富豪の資本主義―北前船と日本の産業化』(名古屋大学出版会、2009年、日本学士院賞)。『近代日本の地方事業家―萬三商店小栗家と地域の工業化』(共編著、日本経済評論社、2015年、企業家研究フォーラム賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
wang
3
江戸後期から明治時代に特に活発に活動した北前船。北前船は魚肥や米などの物資を供給するだけでなく、商品流通により経済活動を発展させる。汽船・通信の発達で利益が得られなくなり船主たちは集積した資本を使い地域主導の産業振興の中心となり、中央の巨大資本と対抗する。銀行や鉱工業に出資したり、地域によっては十分な資本集積が行われず地域の工業が振るわなかったり。越中では北海道への資本投資も行い道内の銀行支店も多かったとあり、ほくほくFGが設立されたのもその流れがあったのか。俳優の大和田兄弟の先祖の事績もあった。2022/10/31
green
0
観光で富山の馬場家・森家に行き、いろいろお話きいて興味もっての読書。本州の各地域で、北前船主がどんな積荷を運んで、どのように発展し、その後汽船使った運賃積になったり北方漁業に参入したり銀行や会社を興したり農地や山林を取得したり鉱業に参入したりしていく様子を、北前船の所有数や積荷の資料をもとにわかりやすく説明されている。日本各地(特に日本海側)にある北前船関連の地を訪れる前に読んでおくとより観光をたのしめる。2023/06/13