内容説明
20世紀が経験した全体主義は、共に属し共に存在する“共通世界”に人々が生きることを否定し、政治と倫理を媒介する共同性を無惨にも葬り去った。この悲劇以降を生きる我々が背負う課題―政治について考えることの可能性とその思想史的意味の探究―に正面から向き合う本書は、共同性という視座からヨーロッパ精神史を捉え直すため、起源にして根幹であるヘブライ的思考とギリシア的思考に定位しつつ近代の思想を再検討する。現代から起源へと遡行し、そして起源から全体主義の時代へと還帰する洞察は、ヘブライ的思考における倫理の意味やギリシア的思考における思惟と存在の位置づけをマイケル・ウォルツァー、プラトン、アリストテレスやプロティノスに則して解明し、さらに20世紀フランスを代表する思想家ベルクソンやポール・ヴァレリーの緻密な分析へと至る。政治のもつ暴力に回収されず、それを押し止める実践を促す倫理の意味が立ち現れる、独創性溢れる野心作。
目次
第1部 ヘブライ的思考―M.ウォルツァーを素材として(ピューリタンの聖徒と出エジプト;創造と出エジプト;命令と命法)
第2部 ギリシア的思考(ギリシア的思考における思惟と存在の関係の概観;共同性への関心と美的無関心)
第3部 ヘブライ的思考とギリシア的思考の交叉(デモクラシーへの志向的超越―H.ベルクソン;共通世界としてのヨーロッパへの還帰―P.ヴァレリー)
著者等紹介
藤田潤一郎[フジタジュンイチロウ]
1969年京都市生まれ。1999年京都大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。京都大学助手を経て現在、関東学院大学法学部助教授。専攻は西洋政治思想史
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感想・レビュー
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