内容説明
ルネサンス精神への旅は、ルネサンスとは何であり、如何にあったかという根本的な問から発する旅である。中世の神秘主義者で預言者ジョアッキーノ・ダ・フィオーレから始まり、近代の合理的思考を旨とする哲学者エルンスト・カッシーラーに至る旅。この間に流れた時間は七、八百年間。その間、西欧人の思考はどのように変遷したのか。ルネサンスはこれに如何に関わるのか。その社会的特徴は如何なるものであったのか。著者はこの時代に発達した科学的方法論や、日記、伝記などの文学作品を取り上げて、ヒューマニズム(人文主義)の諸相を明らかにして、ルネサンス精神の根幹に触れようとする。また著者は、実際に旅したイタリアの地を語る。それは周知のローマやフィレンツェだけでなく、オルヴィエートやリヴォルノでもあったりする。ローマでは、ペトラルカが桂冠詩人となり、革命家コーラ・ディ・リエンツォが蜂起し、ゲーテがジャニコロの丘に憩う。フィレンツェではフィチーノがプラトンを思い、ピーコが諸々の知を夢見る。彼らはロレンツォ・デ・メディチの庇護を受けた哲学者である。内陸都市オルヴィエートでは、シニョレッリの壮大なフレスコ画中のルネサンス的人体表現に中世思想を見出し、海港都市リヴォルノでは、天正遺欧使節やカルレッティの時代に立ち返って、近世日本を思い、近代西欧の行く末を考える。これは紛れもなく身体とともに精神の旅である。
目次
1 キリスト教と世界(ジョアッキーノ・ダ・フィオーレとコーラ・ディ・リエンツォ;ルーカ・シニョレッリの反キリスト;ラウデージのコンパニーア―音楽史上の位置と意義を巡るノート)
2 社会とヒューマニズム文化の諸相(ペトラルカとフィチーノにおける聖アウグスティヌス―キリスト教・異教間の要としての教父;フマニタス研究とアグリコラ―ルネサンス・ヒューマニズムの成立と発展;パラゴーネと科学的方法論;日記・伝記・系譜)
3 ルネサンスと近代(近世ヨーロッパとメディチ家;ジョヴァンニ・ピーコの『演説』考―「英雄の恋」とその意義;ゲーテとイタリア・ルネサンス―特に不死性を巡って;カッシーラーの思想とルネサンス観)
著者等紹介
根占献一[ネジメケンイチ]
1949年生まれ。早稲田大学第一文学部西洋史学科卒業。同大学大学院文学研究科修士課程(史学)修了後、1975年同博士課程(史学)に進む。博士(文学)。現在学習院女子大学国際文化交流学部教授。この間、フィレンツェ(国立ルネサンス研究所)とローマ(教皇庁立グレゴリオ大学)で在外研究に従事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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