内容説明
近世のヨーロッパ諸国は、等族(諸身分)の人格を宮廷や議会に統合し、その手に「正当な暴力」を独占したことで、かろうじて主権国家の顔をしていた。やがてこれらの諸国は、絶対主義を経て中央集権国家に成長していく。一方この種の「正当な暴力の独占」を実現できなかったのが、中央ヨーロッパの老大国「神聖ローマ帝国」であった。しかしそれは決してアナーキーではなかった。地域的に分割された暴力管理制度と、全体を統括する司法制度の組み合わせによって、暴力を法の枠組みに押さえ込み、一定の平和を維持していたのである。この老帝国の故地から、数多くの連邦国家が生み出された。その最大のものである後のドイツで、こうした連邦国家への道が開かれたのはいつか。その起源をこの地に特徴的な等族の「同盟」に求め、プロソポグラフィーや国際政治学の地域理論を駆使して、制度的に最も完成したとされる「シュヴァーベン同盟」(1488~1534)に探るのが本書である。近世ドイツ国家の設計図「シュヴァーベン同盟」の新たな歴史像を提示する。
目次
序章 「連邦制」の淵源としての等族同盟
第1章 シュヴァーベン同盟略史
第2章 同盟の制度
第3章 同盟の人的統合
第4章 同盟の地域統合
結語 連邦制的伝統を担う同盟
著者等紹介
皆川卓[ミナガワタク]
1967年神奈川県生まれ。1999年早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。早稲田大学第一文学部・社会科学部非常勤講師、博士(文学)
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