出版社内容情報
ハイデッガーの思索のいわゆる「転回」(ケーレ)と呼ばれる事態が進行していた1936-38年の時期に、生前の公刊を意図することなく書き記された覚書であり、もう一つの主著と称されているものの、本邦初訳である。ハイデッガーの思索に訪れる閃きの跡をただ黙々と記し続けた、281の断片的考察の集積である。このテキストは、ゆっくり読まれることを要求する。訳語表(独和/和独)を付した。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ピエロ
2
文体は意匠ではなく思想の方法であり書かれたものの内容がすべてではなくその文体に潜む行間や作法を読み取ることに意義を感じる。プルーストがあれだけ彫密で高雅な文体を用いなければならなかったのは時間や意識を対象にした理由であり、ハイデッガーが晦渋かつ歪曲な文体を用いたのは「seyn(真有)」を表現する方法がこうでしかなかっただけの話だ。私としての存在はただただ軽くあるのみであるが、私を付与する空間によって形成される私を存在とは認められない。後期思想のアポリアと揺れて逃げるハイデッガーには剥き出しの人間を感じられ2011/10/02
路雨
0
「存在の響きは存在を、性起としてのその全き本質現成において、存在に立ち去られてあることの蔽いを除くことによって、取り戻そうとするが、このことが起こるのはただ、存在するものが現存在の基づけによって、跳躍の内で開き明けられる存在の中へと戻し立てられる、という仕方においてである。」(「有」を「存在」に置き換えています。筆者)2025/07/02