内容説明
本書は、主として理論的著作を取り上げ、ノヴァーリスの自然思想を十八世紀末の思想状況のなかで明らかにしようとする。第一に、ノヴァーリスの自然思想を、ルネサンス以来のヨーロッパの「自然神秘思想」の伝統の受容と変奏として検討、第二に、ノヴァーリスの思想における「自然」の問題を体系的にとらえ、とくに、哲学や自然科学をふまえた「自然学」が、なぜ、いかにして「詩学」となるのかを考察する。
目次
第1部 超越と自然(「ノヴァーリス」の誕生;ガイストの顕現としてのこの世界;世界の意味の喪失と回復)
第2部 自然学(マクロコスモスとミクロコスモス;魔術;万物の共感の学;しるしの学)
第3部 詩学(心情の表現としてのポエジー;高次の自然学としてのポエジー;文学の理論としての詩学;シンボルとアレゴリー)
感想・レビュー
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iwri
5
ノヴァーリスの思想をノヴァーリス自身の断章・研究ノートと時代の精神的潮流、ノヴァーリス自身が参照した文献などを丁寧にフォローして、ロマン派時代の精神状況の中に置かれたときに見えるノヴァーリスの思想に光を当てた名著。初期ロマン派思想と言うと、ロマン派のアクチュアリティという点が注目されがちだが、中井氏の研究は神秘思想の影響を受けた、啓蒙主義時代の子としてのノヴァーリスに光を当て、来るべき自然学から詩学の接続を説得的に論じている。無視されがちな神秘思想的側面が丁寧に解説されている素晴らしいノヴァーリス研究書。2012/05/16