内容説明
これは生涯をかけて日本のすまいに取り組み続けた建築学者・西山夘三がファインダーとスケッチブックを通して見た昭和の日本のすまいとまちの映像の一部である。
目次
戦前編―昭和10~19年(京都の町並み;大阪の町並み ほか)
戦後の絶対的住宅難編―昭和20~30年(焼け跡とバラック住宅;原爆砂漠のバラック住宅と原爆ドーム ほか)
復興・近代化編―昭和25~34年(炭鉱住宅―北海道;炭鉱住宅―九州 ほか)
高度成長の光と陰編―昭和35年~(木賃住宅・文化住宅;郊外スプロール・建売り住宅 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
23
主に昭和20年から30年にかけての、日本の家屋、町並み、団地などをとらえた写真集。著者の緻密なイラストも魅力。特に、長崎の軍艦島や、ドヤ街 炭鉱住宅など貴重な写真も多数。現代よりずっと貧しく非衛生的だったかもしれない。しかし今の高層マンション群よりも生活感が滲み出ていると感じた。お薦めです。2014/06/02
luckyair
2
豊富な写真と間取り図、簡単な解説で当時の様子が想像できて面白かった。今では見られない戦後のバラックや市電転用住宅、炭鉱住宅、有名な軍艦島の賑わい、そしてそれらが建てられた背景なども含めて斬新だった。徐々に時代が移り変わって今のようなマンションになっていったのだと、一つ一つビジュアルで経過を辿りながら確認していけることはこの写真集の醍醐味。写真は風景だけでなく人が写っているものも多いので、現代との違いを楽しむこともできる。★★★☆2016/06/10
emerkita
2
家(店)の中の、通り抜けになっている部分を「ニワ」と呼んでいたことを、久しぶりに思い出した。学問的な目的で描かれたはずのイラストの肌合いが、何ともいい感じ。
nanana
2
建築家が建てた家や歴史的価値のある邸宅ではなく、庶民の暮らしを深く追及しているという点が重要。しかもこの本は貴重なビジュアルイメージが豊富である。2010/05/13
Atsuya Momotake
1
昭和10年当時、庶民が生涯に数枚の写真を撮ってもらえるかという時代、西山夘三という京大の教員かつ写真家が、コンタックスというドイツの超高級カメラで撮った貴重な写真。西山は自分とそれを取り巻く全てのものを記録し続けてきた稀代の記録魔であった。昭和10ー30年代までの住宅と街並みが記録され、特に戦後の暮らしが、今の貧民国のスラム街と同じようなものであったことがよくわかる。そこからわずか20年で先進国入りした日本と日本人は、たしかに「東洋の奇跡」だ。ドヤは宿のスラングだったことは知らなかった。2015/01/12