出版社内容情報
『エリザベート』は毎年のように帝劇や宝塚歌劇で上演される人気の演目であり、いまなおウィーンの象徴的存在である。19世紀のオーストリア帝国を中心としたヨーロッパの政治社会や文化を背景に彼女の生涯をあらためて検証することで、単なる「悲劇の皇妃」にとどまらない人物像を浮き彫りにする。特に詩作や旅の記録を通じ、彼女が同時代から受けた影響、彼女が同時代や後世に与えた影響という双方向的な視点から、新旧の狭間の時代に生きたきわめて多面的な生涯を描き出してゆく。
内容説明
現代社会の生きづらさにも直結する、「私」をめぐる悩み。宮廷の伝統と葛藤しつつ、自分の人生を貫いた皇妃の「表の顔」と「裏の顔」に、周囲の人々の回想と時代背景から迫る。
目次
第1章 一八三七年の子
第2章 一八四八年の革命
第3章 番狂わせ続きの結婚
第4章 動乱の時代の新皇后
第5章 「美貌」と「療養」による反逆
第6章 新時代の皇妃
第7章 二重の帝国 二重の私
第8章 新たな世界が抱える闇
第9章 反時代的な動き 反時代的な存在
第10章 「私」が消えたその後に
著者等紹介
小宮正安[コミヤマサヤス]
ヨーロッパ文化史・ドイツ文学研究家。秋田大学准教授を経て、横浜国立大学(大学院都市イノベーション研究院・都市科学部)教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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TATA
37
ハプスブルグ家末期の王妃エリザベートの生涯。彼女の人生をなぞるだけではなくて当時のオーストリア帝国の複雑な政治的動揺などを交えて説明。世界史選択でなかったのでこのあたり詳しくなかったのですが写真なども多くて随分と学べました。何年か前ウィーンのシェーンブルン宮殿にも行ったけどこの本読んでから行けばよかったのになと後悔。読んでみて改めて美しく生まれたことの苦難ということなんだろう。平穏な時代であれば幸福な一生だっただろうに。2024/06/10
お抹茶
3
一次史料を駆使した歴史学的な内容というより,エリザベートの中に芽生えていた「私」と「公」という伝統的な価値観の衝突で苦しんだエリザベートの人生を少し文学的に辿る。エリザベートを「三月革命前後の子」と評するように,貴族社会にさえ新しい風が吹き始めた時代。エリザベートの言葉は詩で引用する。療養(放浪)を続けたときの詩には「長い間願っていた このように夢見たいと」。オーストリアとハンガリーの危うい架け橋でもある。ミュージカル「エリザベート」で描かれていたように,エリザベートは不幸と狂奔の人生だったと実感する。2023/10/09
中島直人
2
読了2024/10/07
takao
2
ふむ2024/08/04
リトル★ダック
2
「エリザベート1878」を見て幻滅した後、いろいろ書籍をあたりました。この書籍も最近の情報を基に、書かれているようです。1883年、アントン・ロマコが描いたエリザベート皇后の肖像画を初めてみました。ヴィンターハルターの描いたのとは違って、野性味あふれる感じの皇后です。またあのリンクの工事は、ウィーン博覧会に向けて大規模な工事が行われたのは初めて知りました。でも、博覧会開始後直後に株価が暴落なんて…。2023/09/05