出版社内容情報
【解説】
1571年のレパントの海戦。キリスト教連合国艦隊がトルコ艦隊を撃破したこの戦いで、ガレー船と呼ばれる軍艦が大活躍した。本書は、政治、宗教、経済のみならず、このガレー船にも焦点をあてて、ヨーロッパ中世における地中海の覇権争いを描くという、極めてユニークな内容の書籍である。読者は、ガレー船の技術開発、漕ぎ手の募集、商業船への転用といったエピソードから、中世ヨーロッパ史の未知の側面に触れることになる。また、軍船としての役割を終えたガレー船の「後日談」として、フランスで行われたガレー船徒刑も紹介されている。その実
目次
第1章 海洋国家ヴェネツィア
第2章 ガレー船の黄金時代
第3章 レパントの海戦
第4章 フランスのガレー船
第5章 ガレー船徒刑囚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
春ドーナツ
19
ユーゴーの小説に「パンをひとつ盗んで」大変な目にあうものがあるのだけれど、それはメタファーのようなものだと考えていた。第3章「フランスのガレー船」第4章「ガレー船徒刑囚」を読み進めていく内に、紛れもない事実だと知って愕然とした。脱走兵(ルイ14世の時代は悪夢のような戦争が幾度も繰り返された)は両耳を切り取られて両頬にユリの焼き印を押されてガレー船へまわされる。後半の章は読んでいてかなり辛かった。前半。レパントの海戦。セルバンテスは参戦して左手を失う。「ドン・キホーテ」の二人がガレー船を訪問する場面がある。2019/10/11
鐵太郎
7
フランスでは、国家が経営するガレー船団が1748年に廃止されたあともガレー船自体はのこり、ガレー船が激減した後も、それに匹敵する労役が「ガレー船徒刑囚」として1807年まで残っていたという。ガレー船がフランス海軍から姿を消したのは、1814年のことだったそうな。こういう歴史を抱えている人々と、歴史的には甘い260年を過ごした日本人とは、メンタリティにも差が出るんだろうね。2008/10/22
figaro
5
原題は「ガレーの栄光と悲劇」。ガレー船の栄光はヴェネツィアの東地中海における成功とレパントの海戦。悲劇は、海運の主力がガレーから大型帆船(カラベル、ガリオン)に移行し始めた時期に、フランスで大量のガレー船が建設され、主として徒刑囚が使われたことだ。ルイ14世はその威信を示すためだけに、時代遅れのガレー船による示威を続きる。富をもたらす中世ヴェネツィアの自由人による漕ぎ手とは異なり、フランスでは、漕ぎ手の3年生存率50%の過酷な労働が強いられた。この本の主題は、ガレーの不合理と悲劇だ。2019/08/23
しいかあ
3
このシリーズはあんまり呼んだことなかったけど、分量の割に情報量が少ない。図版の解説も充実しているとは言いがたいし。もう少しガレー船の構造やら艤装やらについての突っ込んだ知識が欲しかったんだけどなあ。あとはフランスの本だからフランスの記述が中心となるのは仕方ないかもしれないけれども、イスラム海賊やマルタ騎士団なんかもガレー船で地中海を縦横無尽に駆け回っていたのだから、そのへんのことももう少し触れてもらいたかったなあ。2013/05/30
トーマス
3
ガレー船=櫂という人力モーター付の船。帆船が主流だった時代に機動力・軍事力で中世の海を支配。前半はヴェネツィアについて。これは塩野七生の海の都の物語の方が詳しい。その後、大型帆船with大砲に取って代わられた。たが、ルイ14世紀のフランスでは奴隷囚人を漕ぎ手にした大型ガレー船が常備される。最後には19世紀に細々とバルト海で航行するのみとなった。ア・カルティエ:2グループ交代で漕ぐ。アヴァン・トゥ:全員で漕ぐ。パス・ヴォーグ:全力で漕ぐ。Voguer:漕ぐ(普通の船はRamer)。2012/01/07
-
- 和書
- きっときみに届くと信じて