出版社内容情報
【解説】
ホメロスが描いた,オデュッセウスを誘惑する人魚(セイレーン)には,その姿の記述はなかった。以降300年にわたり,いろいろな解釈を施してゆく。イメージの歴史と博物誌。
目次
第1章 セイレーンの歌声の魅惑
第2章 セイレーンから人魚へ
第3章 人魚の正体
第4章 人魚姫
資料篇―人魚・そのイメージの変遷(怪物と博物学の出会い;古代の神話;中世の想像界における驚異;博物学者たちにとっての謎;人魚、詩人たちの詩神;東洋の人魚;日本の近代文学の中の人魚;人魚はまだ生きている)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
花林糖
16
人魚(セイレーン)について「ホメロスのオデッセイア」からの伝承や解釈などを、豊富なカラー図版と共に紹介している。このシリーズは資料編まで興味深く読めるのが有難く、この本は本編・資料編ともに◎。印象的だったのは二股尾鰭の人魚の絵や彫刻。2016/10/23
サイバーパンツ
14
古代ギリシアから近代まで、世界各地で語られる人魚伝説を豊富なカラー図版と共に紹介。ホメロスの『オデュッセイア』に登場した怪物セイレーンは、キリスト教世界では罪の象徴として描かれ、その後マナティーと混同されるも、18世紀にリンネが哺乳類に分類、アンデルセンの「人魚姫」以降は、セイレーンの美しい歌声こそ引き継いでいるものの、吸血鬼的な恐ろしさは完全に払拭され、純真さの裏にエキゾチックな性的魅力を併せ持つ存在に。本編を読めば人魚イメージの変遷をざっと知れるが、博覧強記で読んでて面白いのは資料編の方。2018/11/16
misui
3
全世界的に人魚伝説は存在するが、特に淵源となったのはホメロスの『オデュッセイア』とのこと。そして翻訳上のある間違いから聖書において言及され、キリスト教世界では罪の象徴のひとつとして流通していく。マナティーと混同されるもついにリンネによって正され、近代以降はロマン派などによって魔物的なイメージは漂白された。2017/11/06
二藍
2
人魚にまつわる伝承や物語をまとめた一冊。コンパクトだけどそれだけに分かりやすく、絵や写真もたくさんあって面白かった。人魚のイメージもかなり変遷してきてるんだな。紹介されていた『赤い蝋燭と人魚』未読なのが悔やまれてくる……読もう。2013/12/21
islad
1
古代ギリシアから近代に至るまで人々が人魚という生物?をどのように捉えてきたのか、豊富な絵画・写真資料と共に様々な言説が紹介されている。オデュッセイアのセイレーン、八百比丘尼伝説など東西を問わず海のあるところには人魚物語があるというのは興味深い。2017/05/11