出版社内容情報
古代末期から中世にかけて、キリスト教世界では聖人や聖遺物(聖人が身に着けたもの、触れたもの、聖人の肉体の一部など)への礼拝が盛んになり、それらを納める聖なる場所(聖堂、教会など)もまた聖性を帯びた。
こうしたモノや場所は、ほとんどの場合、聖職者や修道士によって聖人伝、奇蹟物語、儀式と結び付けられ、キリスト教信仰の基盤を固めるとともに、王権の強化や社会の統制にも寄与してきた。
本書ではこうした聖性イメージが西欧中世にいかなる影響を及ぼしてきたのか、古代末期から中世の終わりまでを対象に多角的に考察する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nat
26
図書館本。内容が濃かったので読むのに時間がかかってしまった。聖人伝説やヨーロッパのカトリックの教会へ行くとよく目にする聖遺物。それらの聖性イメージの形成と拡散の過程と影響を多角的に考察している。盛りだくさんな内容で、しっかり理解するのは難しいが、少しでも頭の片隅に残しておいて、いつかサント・シャペルなどを訪れてみたい。また、前に読んだエリス・ピーターズの「聖女の遺骨求む」の物語を思い出し、この物語の背景がよくわかった。2024/09/14
MUNEKAZ
9
西欧中世における「聖性」について、幅広く事例紹介した一冊。「聖遺物」も教会に安置されて拝められていただけではなく、輿に乗せられて領内を巡回したり、他地域の聖遺物が入ってきて「シマ」を荒らされたりと結構アクティブな様子に驚く。奇跡を示さないと「聖遺物」として認められないなんてのは、聖なるものが本気で信じられていた時代の、人々が持っていたシビアな部分を表している。教会側も、人々が奇跡に対して思うであろうツッコミへの想定問答を用意している。こうしたせめぎ合いが、聖俗を結び社会を繋ぐ紐帯になっていたのであろう。2024/10/17
人生ゴルディアス
2
この手のは事例集のところでどうしてもだれてしまうが、列聖や人気となる聖遺物の地域的、時間的発展等の考察が適宜挟まり、最後まで面白く読めた。参考文献が非常に丁寧だし、各分野における本邦研究者の紹介や、他の書籍ではあまり見かけない写真なども多く、やけに教育的だなと思ったら、あとがきにてそういうスタンスだったと書かれていて大変すばらしいと感服するなど。あと、本書を読んで『黄金伝説』積読してることを思い出した。2025/01/11