出版社内容情報
「精神医学の医学化」という大きな波のなか、「抽象概念」に対する感度が落ちてきている。そうした危機感から生まれた一冊。 精神医学について語るときの話題には、三つの階層があります。---- A. 個別的なこと(うつ病と診断された患者さんをどう理解しどう治療していくか?)、B. 具体性の高い概念(うつ病の診断基準はどう定められてどんな治療方針が推奨されるか?)、C. 抽象度の高い概念(うつは病気なのか? 健康とは何なのか?)。
B. はA. を理解するための概念デバイス、C. はB. を助けるための概念デバイス。----本書ではこの【概念デバイス】を41項目とりあげて、人間のからだ・こころ・社会のありようを、クリアな眼差で腑分けしていきます。テーマとしては「脳トレ」「価値観」「司令塔のない脳の見取図」「多元主義」「記憶」「精神病理学」「リカバリー」などを掲げ、そこで扱われる【デバイス】は「幸福度」から「旅のメタファー」まで広範に広がります。
精神医学という分野が「いい加減に見える」という人がいるとすれば、それは鋭い指摘です。そこから生まれた「どうしていい加減に見えるのか?」という問いを一緒に考えていくことを目指して、この本は書かれています。豊富な例を交えながら、複層的な編集趣向にチャレンジしながら、読者を41のデバイスで取り囲みます。
序
・ 精神医学の対象: 「脳」「心」それとも「社会」?
・ 精神医学の対象: 第四・第五・第六の立場
・ 精神医学の対象: その意外な候補は?
・ 精神医学は概念を扱う
村井 俊哉[ムライ トシヤ]
著・文・その他
内容説明
“精神医学の混沌”を整理するためのデバイスたち。
目次
第1章 脳トレの矛盾―パーソナル/サブパーソナルの区別 その1
第2章 価値観―パーソナル/サブパーソナルの区別 その2
第3章 司令塔のない人間の見取図
第4章 多元主義 再考
第5章 記憶の精神病理学―概念デバイスの適用例 その1
第6章 精神病理学とは
第7章 リカバリー概念―概念デバイスの適用例 その2
終章
著者等紹介
村井俊哉[ムライトシヤ]
1966年、大阪府生まれ。1991年、京都大学医学部卒。1998年、同大学院医学研究科修了、医学博士(「局在脳損傷にともなう重複記憶錯誤について」)。マックスプランク認知神経科学研究所を経て、2002年京都大学医学研究科精神医学教室講師、2009年より教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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