出版社内容情報
コフートや現代自己心理学派の理論はどのような臨床的意義を持つのか、著者自身の豊富な事例と照らし合わせながら考察する。「共感と自己愛の精神分析」とも言えるコフートや現代自己心理学派の理論は、自己愛の傷つきに苦しむ現代のクライエントの心理的援助にどのような有効性を持つのか。コフートのオリジナルな概念のほか、心理療法の基本に関わる土居健郎、ロジャース、ユングらの視点、さらにはコフート以降の現代自己心理学派や間主観性理論など精神分析の最新理論の臨床的意義を、著者自身の豊富な事例と照らし合わせながら考察していく。
目次
序文 岡野憲一郎
まえがき
第I部 共感と自己愛の諸問題とコフートの自己心理学
第1章 心理療法の指針としての共感体験
1 心理臨床における共感
2 心理療法における「共感」の探究――コフート理論から現代自己心理学まで
3 臨床例による検討
4 おわりに――指針としての共感体験
第2章 「悲劇人間」の精神分析――ハインツ・コフートの生涯と自己心理学
1 コフートの人間観
2 「Z氏の二つの分析」にみる自己心理学的視点への転換
3 コフートの生育史と「悲劇人間」の視点
4 「悲劇的英雄」にみる中核自己
5 「理想的な父親を奪われた子ども」の自己の回復過程
6 おわりに――人間にとっての理想
第3章 心理療法における自己愛と甘えの諸問題
1 自己愛をめぐる否定的なイメージ
2 精神分析学派における自己愛をめぐる議論――健康な自己愛と病的な自己愛
3 土居健郎による自己愛と甘えをめぐる論考
4 臨床例による検討
5 おわりに――一体の幻想から醒め、自己に目覚める
第II部 コフートと他学派との比較と心理臨床
第4章 「甘え」理論とコフートの自己心理学
1 「甘え」と「自己対象」
2 「甘え」理論と自己心理学の比較――土居が言及したコフートを通して
3 臨床例による検討
4 おわりに――現代人にとっての甘えと自己愛の問題
第5章 ロジャースのクライエント中心療法とコフートの自己心理学
1 臨床心理学者カール・ロジャースの登場
2 日本におけるロジャース離れと精神分析への傾斜
3 「共感」をめぐるロジャースとコフートの相違
4 「解釈」をめぐるロジャースとコフートの相違
5 クライエントがどう体験するかによる相違
6 ロジャースとコフートの「自己」の概念
7 ロジャースとコフートの「自己愛」の捉え方
8 臨床例による検討
9 おわりに――ロジャースとコフートの相互参照の意義
第6章 自己愛障害をめぐる現代ユング派とコフートの接近
1 現代の自己愛障害への注目
2 自己愛障害をめぐる現代ユング派とコフート派の相似点と相違点
3 臨床例による検討
4 おわりに――自己心理学とユング派の豊かなイメージ
第III部 現代自己心理学と心理臨床
第7章 臨床場面における治療的相互交流の共同構築
1 心理療法とは何かという問い
2 現代精神分析における動向
3 現代自己心理学派の臨床スタンス
4 臨床例による検討
5 おわりに――「守破離」としての心理療法家の成長過程
第8章 間主観的アプローチからみた治療的やり取り
1 メタ理論としての間主観性理論
2 間主観的視点によるコフート理論の再構成
3 間主観的アプローチの臨床実践のためのガイドライン
4 臨床例による検討
5 おわりに――他者の心を理解することへの果てしない挑戦
第9章 現代自己心理学における「共感」の探究
1 現代自己心理学の動向
2 乳幼児研究と大人の心理療法をつなぐ共感的相互交流の研究
3 臨床例による検討
4 おわりに――言葉にすることと言葉にしないこと
第10章 心理療法における自己体験の治療的変化
1 治療要因としての自己体験の変化
2 精神分析的心理療法における自己体験の視点
3 クライエント中心療法における自己体験の変容
4 親面接を通して見たクライエントの自己体験の変容
5 臨床例による検討
6 おわりに――心理療法における自己対象環境の提供
参考文献
索引
安村 直己[ヤスムラ ナオキ]
【著者紹介】
安村直己(やすむら・なおき)
1960年生まれ。大阪教育大学大学院教育学研究科修了。カール・メニンガー精神医学校留学、精神科クリニック勤務などを経て、現在、甲子園大学心理学部教授。臨床心理士、JFPSP認定精神分析的心理療法家。著書(いずれも分担執筆)に『体験から学ぶ心理療法の本質』(創元社、2002)、『現場に活かす精神科チーム連携の実際』(創元社、2006)、『ポスト・コフートの精神分析システム理論』(誠信書房、2013)、訳書(いずれも共訳)に『臨床的共感の実際』(人文書院、1999)、『自己心理学入門』(金剛出版、2001)、『自己心理学の臨床と技法』(金剛出版、2006)などがある。
内容説明
「自己愛」の傷つきに苦しむ現代のクライエントの心理的援助、その成否はセラピストの「共感」にかかっている―共感と自己愛について画期的な理論を打ち立てたコフートや現代自己心理学の臨床的意義を著者自らの豊富な事例と照らし合わせながら考察する。
目次
第1部 共感と自己愛の諸問題とコフートの自己心理学(心理療法の指針としての共感体験;「悲劇人間」の精神分析―ハインツ・コフートの生涯と自己心理学;心理療法における自己愛と甘えの諸問題)
第2部 コフートと他学派との比較と心理臨床(「甘え」理論とコフートの自己心理学;ロジャースのクライエント中心療法とコフートの自己心理学;自己愛障害をめぐる現代ユング派とコフートの接近)
第3部 現代自己心理学と心理臨床(臨床場面における治療的相互交流の共同構築;間主観的アプローチからみた治療的やり取り;現代自己心理学における「共感」の探究;心理療法における自己体験の治療的変化)
著者等紹介
安村直己[ヤスムラナオキ]
1960年生まれ。大阪教育大学大学院教育学研究科修了。カール・メニンガー精神医学校留学、精神科クリニック勤務などを経て、甲子園大学心理学部教授。臨床心理士、JFPSP認定精神分析的心理療法家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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