出版社内容情報
【まえがき】
本書は、私の古稀の祝いのときの学術集会での講演と討論の記録毒生して、いわば「わが国における精神分析の成立ちを語る」本をつくろうというところから話が始まった。しかし、成り立ちばかり語るのではせっかく本をつくるのに残念なので、では第2部で、いま現在の私のそれぞれの領域における最新の研究と臨床のあり方を読者に共有していただこうということになった。
たとえば第2部第3章の「児童治療における前言語的交流と言語的交流」(2002年10月)とか、「精神分析の中のウィニコット」(2003年6月〉、「母性再考」(2003年3月)といった、本書刊行直前に発表された最新の論文もあえて収録したのはそのためである。さらに、成り立ちから現在まではそれでよいけれども、では、いまこれからどうするのかというところで、エピローグでそのことを取り上げることにしたという次第である。
しかしそうではあっても、しかも本書は、どこから読んでもよいように編集されている。たとえば治療構造論のことを読みたかったら、それも、いまの実際を知りたかったら、第2部第2章からお読みになり、その上でその成り立ちを知りたいと思って第1部第2章に戻るということもできる。
また、もっとも最近の最先端の精神分析の状況をまず知りたい方は、エピローグを読んでいただいて、私と日本の代表的な精神分析家たちが、間主観性についてどんな勉強をしているかを知っていただき、そこから第2部、第1部と逆に読むこともできる。また、D・スターンの自己感の発達論を読みたければ、第1部第3章、第2部第3章、そしてエピローグというふうに順番に読むこともできるし、逆にエピローグからさかのぼることもできる。
また、とにかく私は対象喪失とモーニング、あるいは、フロイトからだよという方は、そんなふうに第3部の章から読んでいただくこともできる。でも、どんな順番でお読みくださっても、その奥には一連の文脈が第1部から第2部、第3部と設定されているので、結局は、その文脈と流れを読者がご理解いただけるようになっている。
また、写真やコラムを編集部のご厚意でいろいろ配列することができた。気楽に写真やコラムを楽しんでいただければ幸いです。たとえば既述のコラムには、なつかしく「風と共に去りぬ」 から「マイガール」までたのしんでいただきます。
本書のタイトル『精神分析のすすめ』は、福沢諭吉先生の『学問のすすめ』にあやからせていただくことにした。
では、私の『精神分析のすすめ』を読者のお好みに合わせてお読みください。
【編著者紹介】
小此木啓吾(おこのぎ けいご)
1930年生まれ。慶応幼稚舎より普通部をへて慶応義塾大学医学部卒業。慶応義塾大学医学部精神神経科助教授、慶応義塾大学環境情報学部および同医学部精神神経科兼担教授をへて、現在、東京国際大学大学院臨床心理学研究科教授、慶応義塾大学環境情報学部客員教授、国際精神分析協会正会員、国際精神分析協会訓練分析家、日本精神分析協会書記、元日本精神分学会会長、元世界乳幼児精神保健学会副会長、その他。慶応精神分析セミナー代表、慶応心理臨床セミナー運営委員および講師。医学博士。精神分析学、精神医学専攻。主著に『現代の精神分析』(講談社学術文庫)、『フロイトーその自我の軌跡』(NHKブックス)、『モラトリアム人間の時代』『日本人の阿闍世コンプレックス』『対象喪失』(以上、中央公論社)、『自己愛人間』(ちくま文庫)、『心の臨床家のための必携精神医学ハンドブック』『阿闍世コンプレックス』(以上、創元社)、『フロイト思想のキーワード』(講談社現代新書)、訳書に『フロイト著作集』(人文書院)はか多数。
内容説明
本書は日本の精神分析において長年指導的役割を果たした著者による自伝的研究史である。著者がその師古沢平作の衣鉢を継いで阿闍世コンプレックスを完成した上、柔軟な知性を駆使して現代の新しい精神分析理論を次々と自家薬篭中のものとしたお手並は見事というほかはない。
目次
第1部 その成り立ちから現在へ(神経学との出会い―三浦岱栄先生と;哲学少年の私と治療構造論 ほか)
第2部 現在そしてこれからへ(事後性―記憶は書き換えられる;治療構造論の実際 ほか)
第3部 私のフロイト研究と対象喪失とモーニング(対象喪失とモーニング;わがフロイト像(日本精神分析学会第36回大会会長講演、一九九〇))
エピローグ いま、そしてこれからの精神分析の課題(二〇〇三年四月一九日・小寺精神分析研究セミナーより)(D.スターンの間主観的なかかわりあい;間主観性理論について)
著者等紹介
小此木啓吾[オコノギケイゴ]
1930年生まれ。慶応幼稚舎より普通部をへて慶応義塾大学医学部卒業。慶応義塾大学医学部精神神経科助教授、慶応義塾大学環境情報学部および同医学部精神神経科兼担教授をへて、現在、東京国際大学大学院臨床心理学研究科教授、慶応義塾大学環境情報学部客員教授、国際精神分析協会正会員、国際精神分析協会訓練分析家、日本精神分析協会書記、元日本精神分学会会長、元世界乳幼児精神保健学会副会長、その他。慶応精神分析セミナー代表、慶応心理臨床セミナー運営委員および講師。医学博士。精神分析学、精神医学専攻
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