出版社内容情報
【解説】
精神病質という現代的難問に切りこむ。あらゆる人間は障害者である,とする著者の主張は,読者の内なる悪や影,残酷な犯罪者や愛する能力欠如の人々をどう見るか見解を示す。
目次
門前には完全な健康が?
元型的現象としての障害者性:あらゆる人間は障害者である
エロス
漂流民、不良―そしてエロスの障害者、精神病質者
大衆文学にみられる精神病質者
精神病質概念の歴史的変遷
心の荒野―脱落と遺伝
傷ついたエロス
モラルの欠如あるいは不足
心の発達の欠如
背後にある抑うつと不安
精神病質者の性と宗教
精神病質者の二次症状
代償された精神病質者
攻撃と影とエロスおよび精神病質者は世界を治めることはないという不思議
精神病質者の治療
モラルの礼讃と良い作法
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しょうゆ
2
精神病質(サイコパス)についてユング心理学からその特徴を論じた一冊。すごく面白くたくさんの箇所に付箋を貼って読み終えた。エロスの欠如がその特徴であり、単に犯罪者ではないという軸、さらにはだれしもが心の中に何も生えてこない、発達しえない荒野がある。自分の荒野はどこにあるのかをみつめること、甘い期待と楽観性でそこを育てられないことなどシニカルな著者らしい言葉に満ちていた。北欧神話、ドリアン・グレイの肖像なども引用されていて、幅が広い。さすがである。2024/02/17
CP_CP_JA
1
シニカルだけどラディカルな一冊。エロスの欠如といった、精神病質者の本質を突き、故に精神病質者は改善しないといった納得の論が展開されている。我々は心理学的な意味において、みんな障害者であるといった著者の言葉は、不自然な健康志向が広まる現代においては大切な考えである。別著の「心理療法の光と影」を読んだことがない人は、自身の救済幻想が打ち砕かれるのではないだろうか。ただ、ポップである種の偽善的な対人援助者が増えないためにも、著者の本は別著も含め、必読書の一冊と言えるだろう。2022/07/01