出版社内容情報
【解説】
「これが私」と思う私は,本当の私なのか?人間の人格の多層性について,ギリシャ神話を手掛かりに,平易に解説。二重人格や二重身が持つ病理性や癒しについても考える。
内容説明
「ほんとうの私とは何か」という問いは、すべての人に重くのしかかっている。これに答えるには「もう一人の私」の認識が不可次だ。本書は「もう一人の私」について語りつつ、現代人のアイデンティティ探索に豊かなヒントを与えてくれる。
目次
プロローグ 旅への誘い
第1章 もう一人の私を訪ねて
第2章 旅の出会い:アンフィトリオン
第3章 おまえは誰だ!?
第4章 悲劇と喜劇
第5章 生まれたものと生みだしたもの
エピローグ 旅の思い出
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きょちょ
24
「もう一人の私」とは一体何者なのか・・・。「二重人格」「二重身」「無意識」「影」「魂」といった観点から考察する真面目な本。この「もう一人の私」は、悲劇を生んだり喜劇になったりする。悲劇の場合は芥川龍之介のように自殺したり、あるいは発狂してしまう。しかし、実は「もう一人の私」とは、それも「私」なのである。つまり、私の中のもう一人の私をどう捉えていくのか、ということなのだが、本書にも当然答えはないし、私などはどうでもよいという境地・・・。 だって「私」全部わかるわけないですよ。 だから酒飲もうっと。 ★★★ 2017/07/12
俊介
15
光あるところに影があるごとく、「私」がいるところには「もう1人の私」も必ずいる。本書はその「もう1人の私」を見つめた本だ。「もう1人の私」とは何か。それは様々な含みを持つ(著者も敢えてきちんと定義しない)。嫌いな私、時たま顔を出す正反対な性格の私、他人の中に映る私、言わば「今この私」だとは認められない(たくない)私の集合体だ。それは、影のように嫌でも常に私にくっついて来る。この辺の著者の言い回しは文学的であり、難解で理解しがたいとこはあるが、自分には不思議としっくりきた。しばしば、不快感や不安感を覚える→2020/09/06
しょうゆ
3
アンフィトリオンの神話がまずとても面白く、そこを膨らましていくかのように著者が入れて行くコメントや他の小説の話が連綿と連なって行く、不思議な本である。何か結論があったり(そんな次元の話ではない)、主張を読み解くような読書スタイルにはそぐわないと思うが、心が豊かになるような一冊だった。2017/03/20
のろろ
2
良書です。二重人格、二重身の症例、小説、神話、戯曲などの文学作品、様々な視点から「もう一人の私」について掘り下げています。ギリシア神話のアンフィトリュオンの話を主軸にしての考察が続きますが、神話に関して全く無知の私でも問題なく入っていけました。本全体としての内容は難しいですが、テーマは一貫しているので興味があれば引き込まれます。ユング心理学のシャドーをどう理解したらよいのか、という点でもとても参考になった一冊でした。2011/07/06