内容説明
筆者は精神医学の臨床面で変身願望と関係した正常心理から異常心理に到る幅広いスペクトラルの中の人間像を見てきている。精神の変革は時代の要請にかなった適応の手段である場合もあり、その路線から踏みはずしが狂気に到る場合もあり、これらのさまざまに変容する人間の在り方を精神科医の立場から分析してみたいと思う。
目次
誰にも潜んでいる変身願望(人は誰も変わる;青春期に著しい変身)
人間の想像力が育んだ変身伝説と原始心性(想像性と変身譚;人間の原始心性)
性の揺らぎと変身(女らしさと男らしさ;女の時代;潜在している異性;変身する人たち;両親と子の三角関係)
人間にそなわった仮面と素顔(変身と仮面;自己表現の可能性を試みる変身;存在の危機感からの変身;逃走変身;攻撃的変身;薬物変身)
狂気に到る変身(精神患者と変身;小さな天使のままでいたい;影の病;人の体に悪霊が憑く;自分の戸籍を否認する;恋の病)
人間の変貌(著しく変わる都市人;現代の青年像;人間の変容と仮面)