出版社内容情報
一見、相対する羊飼いと狼の同じ山でのそれぞれの生活を描き、敵か味方か、正義か悪か、といった単純化したフィルターを外して物事を見ることの大切さを伝える。訳者は日本を代表する詩人・谷川俊太郎氏。羊飼いの視点と狼の視点で表・裏表紙の両サイドから読むことができ、しかも文章は両サイドとも同じもの。一種の仕掛け絵本としてのユニークさもある。フランスでは『アンコリュプティブル賞』(2019-2020)を受賞。
内容説明
ひとつのやまにすむ、ひつじかいとおおかみのはなし。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シナモン
145
一つの山が前の方からは羊飼いの視点で、後ろの方からはオオカミの視点で語られている。「ここは わたしの やま」「わたしは ここにすみ ここで ねむり ここで たべる」…羊飼いの言葉も、オオカミの言葉も全く同じ。でも見える世界はこんなにも違うんだなぁ。自然はみんなのもの、人間だけのものじゃない。改めてハッと気づかされるような一冊でした。2021/04/22
モリー
57
狼と人、両者は、同じ山に暮らしながらも共に生きる道は見いだせなかった。人類は、野生動物を滅ぼし、山を我がものとした。人と人の間にも同様の歴史が繰り返されてきた。先住民を滅ぼし後から来た集団が、彼らの土地を我がものとする歴史は、古今東西、枚挙に暇がない。冒頭には、「歴史はとかく勝者によって語られるものである。」と記述がある。表表紙からも裏表紙からも読める。全く同じ物語が勝者と敗者の視点から語られるのだ。しかし、不思議な事に両者が語る物語は一言一句、同じ言葉で語られるのである。著者の狙い通り、既成概念が狂う。2020/03/21
とよぽん
37
谷川俊太郎さん、いい絵本を翻訳されたなぁ。斬新な仕掛けで、読者をうならせる。最後の文「わたしのやま、ここが すきになったら だれでも すめるだけの ひろさは ある」が、深い意味をもつ。表紙のアイデアも面白い。シンプルで新鮮。2020/03/30
ヒラP@ehon.gohon
31
羊飼いとオオカミと、互いに大切に思っている山です。共存してはいても、同じ山なのに理解し合う事は難しそうです。それぞれの立場から語る山ですが、前後から読み進む仕掛けのために、ページ数に限りがありました。シンプルだけど、ちょっと言葉足らずのような気もします。2021/07/11
りょうみや
23
表から読めば羊飼いの立場の話、裏から読めば狼の立場の話で、同じ山に住む両者のセリフはまったく同じ。その構成からか息子もとても気に入った絵本。前書きにあるように「歴史はとにかく勝者によって語られる」もので、様々な立場、それぞれの正義があるということをこの絵本から子供が理解したかは分からないが、そのきっかけにはなるかもしれない。2020/04/02
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