出版社内容情報
戦前の黎明期から戦後にかけてデザインの第一線で活躍し、その激動の歴史に立ち会ってきた著者による記録的回顧録を新装復刊。
戦前から戦後にかけてデザインやイラストレーションの第一線で活動し、デザイン運動の牽引者としても業績を残した伝説的なデザイナーが、自らの体験をもとにグラフィックデザインの草創期から戦後の拡大期にいたる主要な出来事や人々の動きをつづった回想録の新装復刻版。復刻版の装幀は服部一成が担当。
20世紀初頭、広告や出版といったメディア産業の勃興とともに、その意匠や設計にかかわるデザインやイラストレーションの領域が立ち上がる。多くの若い才能がこの新しい分野に飛び込み、国内外の動向を踏まえながら、切磋琢磨と試行錯誤を繰り返してきた。この過程でさまざまな思潮や集団が誕生し、時代の流れと格闘しながら、現代へとつながる理論や方法、社会基盤をかたちづくってきたのであった。
1976年に刊行された本書はこのような疾風怒濤の半世紀に伴走し、自らもその一部として大きな影響を発揮してきた一流デザイナーが記述した貴重な証言となっている。500頁を越えるボリュームのなかには有名無名の先人たちの苦心、林立する集団の動向、国家体制とデザイナーのかかわり、戦後の再出発と産業的発展、デザイン・ジャーナリズムの展開など、日本のデザイン史を語るうえで重要な人物や出来事が同時代の文化や社会の動向のなかで活写され、研究者にとって一級の史料であるとともに、ひとつの時代物語としての面白みに満ちている。
「わが国のグラフィック・デザイン史と名づけられるものは、残念ながら、まだまとまって叙述されていないように思う。人手さえあれば、図版的資料は集まるかもしれない。(…)しかし、グラフィック・デザインを、 造形の世界での創造活動という別の次元で考えるなら、そうもゆくまい。グラフィック・デザインといえども、創造活動の他の分野と無縁なものでなく、無縁どころか、深いつながりをもって、 それらの歴史を背景にして、舞台に登場したのである。そして1世紀、デザインも自分の歴史の背景を持ってもよいではないか。デザインも造形史の一分流として、今日“大いなる河"となった。河口を拡げる壮快な仕事が一方にあるが、一方に、それを遡ってみる仕事もあってよいではないか。この〈体験的デザイン史〉は、しかしそんな、大それた考えで書き出したわけではない。古いデザイン雑誌を繰りながら、それからそれへと思い出される、過ぎ去った出来事をノートした〈あるデザイナーの回想〉といったところ。その回想は、 初期の商業美術時代から、戦争を経て、日宣美のデザイン活動に至るまで、およそグラフィック・デザインの本流に沿っており、その意味では“史的”興味を持ってもらえるかとも思う」(序文より)
【著者紹介】
山名 文夫:1897年広島県生まれ。日本のグラフィックデザイン、イラストレーションの黎明期において先駆的な役割を果たし、そのモダンで洗練された作風と幅広い活動は日本のデザイン文化に大きな影響を与えた。1923年にプラトン社に入社し、文芸誌『女性』や娯楽誌『苦楽』でカットや装画を発表。1929年に資生堂入社。1934年に日本工房に参加し、対外宣伝誌『NIPPON』のレイアウトを担当。1936年から43年まで資生堂に復職。また、1948年からは同社宣伝文化部嘱託として継続的に同社の広告宣伝にかかわる。1966年には同社宣伝部の初代制作室長を務めた(~69年)。教育活動にも携わり、1947年に多摩造形芸術専門学校(現・多摩美術大学)図案科教授就任、1965年には日本デザイナー学院を設立、初代学院長を務めた。デザインの啓蒙・振興にも尽力し、1951年に日本宣伝美術会(日宣美)、1952年に東京アド・アートディレクターズクラブ(現・東京アートディレクターズクラブ)の創設に参加したほか、数多くの評論や著作を残した。1980年逝去。
内容説明
女性のイラストレーションを用いた資生堂の広告や、紀ノ国屋のロゴタイプなどで知られるグラフィックデザイナー、山名文夫。初期の商業美術時代から戦後の発展期までデザインの本流を歩みつづけた著者が、自身の見聞をもとに綴る先駆者たちの道のり。
目次
プラトン社時代
資生堂時代
ヤマナアヤオ・アド・スタディオ
日本工房
オリンピックと万国博―1940
資生堂に帰る
デザイナー集団の誕生
デザイナー集団の連合
デザイン・ジャーナリズムの発端
デザイン・ジャーナリズムの展開〔ほか〕
著者等紹介
山名文夫[ヤマナアヤオ]
1897年広島県生まれ。日本のグラフィックデザイン、イラストレーションの黎明期において先駆的な役割を果たし、そのモダンで洗練された作風と幅広い活動は日本のデザイン文化に大きな影響を与えた。1980年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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きむ
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