出版社内容情報
精神分析が日常臨床にどのように活かしうるのか、日々葛藤の中にいる臨床家の要望に応えるべく一流の執筆陣による実践が論じられる今日の臨床状況では、正式な精神分析の対象となるクライアントはごく限られており、心理臨床家の大多数は日常臨床の中でいかにして精神分析に基づいた実践を行うか葛藤に満ちた現実の中にいる。本書は、精神分析が日常臨床にどのように活かしうるのか、一流の執筆陣による実践が論じられる。臨床の初心者のみならず、精神分析に敷居の高さを感じていたり、精神分析の応用に関心があったりする、医師や心理臨床家に是非一読を勧めたい。
はじめに (細澤 仁)
第?部 日常臨床と精神分析
第1章 日常臨床に活かす精神分析 (祖父江典人)
――日常臨床と死の世界
第2章 精神分析は日常臨床に役立つか (成田善弘)
第3章 日常臨床と精神分析 (松木邦裕)
――精神科一般診療に役立つ精神分析と精神分析臨床
1 はじめに
2 精神科病院やクリニックでの日常臨床に精神分析がどのように役立つのか
3 精神医学と精神分析に相違はあるのか
4 おわりに
第4章 日常臨床と精神分析 (細澤 仁)
1 日常臨床という場
2 大事故を契機とするPTSD症例
3 思春期の解離性同一性障害の症例
4 考察――精神分析的体験の本質から見た日常臨床
5 まとめ
特別寄稿 「日常臨床に生かす精神分析」について (馬場禮子)
――精神分析の日常と非日常
第?部 病院における実践
第5章 病院の臨床 (木村宏之)
1 はじめに
2 病院という設定
3 病院の臨床――症例提示
4 ベッドサイド面接の実践
5 おわりに
第6章 薬と精神分析的観点 (江崎幸生)
1 はじめに
2 投薬と治療者-患者関係
3 拒薬について
4 過量服薬について
5 薬と逆転移感情
6 おわりに
臨床コラム1 精神科病院における双極性障害 (奥田桃子)
――成人してからの母親との葛藤
臨床コラム2 精神科病院におけるパーソナリティ障害 (西岡慶樹)
――幼児的自己を抱えるということ
臨床コラム3 病院における発達支援 (中川麻由子)
臨床コラム4 臓器移植と心理療法 (北島智子)
――ある女性レシピエントとの出会いを通して
第?部 教育における実践
第7章 学生相談の力動的実践 (岡田暁宜)
1 はじめに
2 二つの「精神分析」
3 学生相談の多義性と創造性
4 学生相談で扱う問題の連続性と重複性
5 学生相談における精神分析――過去と現在
6 学生相談の力動的実践
7 おわりに
第8章 学校臨床における緊急支援 (上田勝久)
――生徒の自死事案をめぐって
1 はじめに
2 生徒の自死に対する学校の反応
3 想定されるさまざまな事態とその対応法について
4 おわりに
臨床コラム5 学生相談における発達支援 (和田浩平)
第?部 福祉における実践
第9章 ひきこもりへの支援 (浜内彩乃)
1 はじめに
2 ひきこもりへの支援
3 あるひきこもりの事例
4 事例をめぐる考察
5 おわりに
第10章 福祉における実践 (木谷秀勝)
――自閉症スペクトラム障害児者への支援を中心に
1 はじめに
2 転機となったある青年期の症例との出会い
3 発達障害児者への理解と対応
4 精神分析から学んだこと、発達臨床から学んだこと
5 まとめにかえて
第11章 シーシュポスはほほ笑む (平野直己)
――精神分析は非行の地域心理臨床から何を学ぶか?
1 問題――精神分析の応用という「失敗」から学ぶ
2 地域の中での非行臨床
3 事例を通して――春男の事例
4 繰り返される日常を生きていくこととその臨床実践
5 おわりに
臨床コラム6 福祉における実践 (松平有加)
――仮面の奥のたどり着けなかった悲しみ
臨床コラム7 発達障害をもつ人への適応支援 (豊田佳子)
――力動的視点がもたらすもの
第?部 産業における実践
第12章 企業内メンタルヘルス相談 (乾 吉佑)
――精神力動的理解と応用
1 はじめに
2 職場で課題となる二つの職場不適応
3 メンタルヘルス相談の実施上の準備
4 事 例
5 メンタルヘルス相談を有効にするために
6 おわりに
臨床コラム8 産業における支援 (前川由未子)
おわりに (祖父江典人)
人名索引/事項索引
祖父江 典人[ソブエ ノリヒト]
愛知教育大学大学院教育学研究科学校教育臨床専攻教授、臨床心理士
細澤 仁[ホソザワ ジン]
フェルマータ・メンタルクリニック院長、精神科医
内容説明
今日の臨床状況においては、正式な精神分析の対象となるクライアントはごく限られており、精神分析に関心がある心理臨床家の大多数は、日常臨床の中でいかにして精神分析に基づいた実践を行うことができるのかという葛藤に満ちた現実の中にいる。本書は、そのような要望に応えようとするものである。すなわち、医療、教育、福祉、産業等の領域において、精神分析が日常臨床にどのように活かしうるのか、一流の執筆陣による実践が論じられている。
目次
第1部 日常臨床と精神分析(日常臨床に活かす精神分析―日常臨床と死の世界;精神分析は日常臨床に役立つか;日常臨床と精神分析―精神科一般診療に役立つ精神分析と精神分析臨床;日常臨床と精神分析;「日常臨床に生かす精神分析」について―精神分析の日常と非日常)
第2部 病院における実践(病院の臨床;薬と精神分析的観点)
第3部 教育における実践(学生相談の力動的実践;学校臨床における緊急支援―生徒の自死事案をめぐって)
第4部 福祉における実践(ひきこもりへの支援;福祉における実践―自閉症スペクトラム障害児者への支援を中心に;シーシュポスはほほ笑む―精神分析は非行の地域心理臨床から何を学ぶか?)
第5部 産業における実践(企業内メンタルヘルス相談―精神力動的理解と応用)