出版社内容情報
ラカンを読んだことのない人でもラカンの基本概念とラカン派の臨床実践が手に取るようにわかる、期待を裏切らない文字通りの入門書。
内容説明
『エクリ』の新英訳を完成させたブルース・フィンクによるラカン精神分析の実践的入門書。ラカン派の理論と技法を豊富な事例を通じてこの上なく明快に解説。
目次
第1部 欲望と精神分析技法(分析における欲望;治療過程に患者を導くこと;分析的関係;解釈―欲望の場所を開くこと;欲望の弁証法)
第2部 診断と分析家の位置(診断に対するラカン派のアプローチ;精神病;神経症;倒錯)
第3部 欲望を越える精神分析技法(欲望から享楽へ)
著者等紹介
中西之信[ナカニシユキノブ]
京都大学大学院・人間環境学研究科博士課程単位取得退学。言語聴覚士。専門は言語臨床・精神分析。現在、慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンター言語聴覚科課長
椿田貴史[ツバキタタカシ]
京都大学大学院・人間環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士。臨床心理士。専門は臨床心理士。現在、名古屋商科大学マーケティング学部准教授
舟木徹男[フナキテツオ]
京都大学大学院・人間環境学研究科博士課程単位取得退学。専門は精神分析・宗教史。現在、龍谷大学非常勤講師
信友建志[ノブトモケンジ]
京都大学大学院・人間環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士。専門は思想史・精神分析。現在、龍谷大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かもしか
8
とりあえず、通読してみた。ラカンの本、もちろん解説本ではあるが、何冊かは読んでいたのだが、臨床的見地から書かれた、ラカン理論というだけでも、非常に参考になった。 とくに、第1部でとりあげられる、精神分析のめざすところは、他の書にはない視点を与えていただいた。父性隠喩、対象a、享楽をキーワードに読んでしまったので、神経症、ヒステリー、倒錯の部分の理解には、あまり自信がもてないが・・・ 結局は、人間の実存とは、対象aであるということになるのか?2015/02/06
Z
7
良書。何でもそうだが、基本的な語彙(あるいはジャーゴン)0で読むのは大変だと思うが、それはもっと軽く手にはいる新書なり文庫で頭に入れて読めば、ラカンの思想の入門として個人的に一番。最近の変容なり、後期の出版されてない講義群を巡る論考は本当にそうなのかよくわからんところもあるが、精神分析の基本となる神経症、また倒錯をラカン派のパースペクティブで整理した本は、あまり類書が意外となくかなりためになる。哲学的視点よりも治療としての視点で書かれているので、変に道に迷うこともないかと。いい本だった2022/10/20
ルンブマ
4
読めば読むほどに、例の「否定神学」批判がよくわからなくなってくる。例えば、「ファルスというひとつの謎=欠如の存在がラカンの精神分析のシステムを完全なものにしているが、一方でそのシステムからこぼれ落ちる外部=他者を排除してしまっている。2023/08/06
ayako
2
ラカン=難解というイメージがあるが、臨床的見地から入門書として書かれているだけあって、とても分かりやすい。臨床の現場で実際に有用かどうかは私には分からないが、自分も欲望する主体としての「神経症者」である以上、決して他人事ではなく、自身や周りの社会、文化について考える上でさまざまなヒントを与えてくれる。2014/05/24
yoyogi kazuo
1
すごいな、こんなにタネ明かししちゃっていいのだろうか、というのが最初の感想。これを読んだクライアントに接する分析家はめんどくさそう。ラカン解説書が持って回った言い回しで隠蔽しようとしていることをアメリカ人の知性が身もふたもない言い方で平易化してしまった感じ。非常にいい本だと思う。ただし後半は難解で普通のラカン解説本とあんまり変わらない。2023/02/05