『ねじまき鳥クロニクル』を読み解く―同志社大学講義録

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『ねじまき鳥クロニクル』を読み解く―同志社大学講義録

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  • サイズ 46判/ページ数 208p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784413233071
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0095

出版社内容情報

悪に無自覚であってはならない――。
人と人との関係の中から悪は生まれ、自らの悪に気づかないことが、さらなる恨みや憎しみを生む。
人々の悪が社会の中で増幅すれば、やがて戦争や虐殺事件のような惨劇につながることもある。
村上春樹氏の長編小説『ねじまき鳥クロニクル』をテキストとして、資本主義、能力主義、軍国主義など社会システムが生み出す悪から、人間関係の中で生まれる悪まで、人間の「根源悪」の問題についてあらゆる角度から考察する。
母校・同志社大学の教育機関「新島塾」にて行われた講義を書籍化。

内容説明

悪に無自覚であってはならない―。人と人との関係の中から悪は生まれ、自らの悪に気づかないことが、さらなる恨みや憎しみを生む。人々の悪が社会の中で増幅すれば、やがて戦争や虐殺事件のような惨劇につながることもある。村上春樹氏の長編小説『ねじまき鳥クロニクル』をテキストとして、資本主義、能力主義、軍国主義など社会システムが生み出す悪から、人間関係の中で生まれる悪まで、人間の「根源悪」の問題についてあらゆる角度から考察する。

目次

第1章 メタファーを読み解く
第2章 資本主義がつくる悪
第3章 軍国主義がつくる悪
第4章 能力主義がつくる悪
第5章 無自覚になされる悪
第6章 自分の悪を受け入れる

著者等紹介

佐藤優[サトウマサル]
1960年東京都生まれ。作家、元外務省主任分析官。1985年同志社大学大学院神学研究科修了。外務省に入省、在ロシア連邦日本国大使館に勤務。その後、本省国際情報局分析第一課で、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。2002年背任と偽計業務妨害容疑で逮捕され、2009年最高裁で有罪が確定、外務省を失職。2005年に発表した『国家の罠』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社、2006年)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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キク

57
外務省のラスプーチンとも呼ばれた佐藤優が、神学や資本主義論の視点から「ねじまき鳥」を読み解いていく。僕は多分、ねじまき鳥を5、6回は通読していると思うんだけど、僕がみたことのない風景を、佐藤は「ねじまき鳥」に見い出していく。同じ小説を読んでここまで違うものを観ているのかとビックリした。それは多分、「ねじまき鳥」が多様な解釈に耐えうる高いレベルの総合小説であり、佐藤優が特異な視点を持つ文化人だからだ。読書会に参加する面白さを、この本を読むことで感じることができた。また、どこかの読書会に参加してみたくなった。2024/06/30

gtn

32
村上春樹の作品に仮託し、著者が熟考した思想を、これでもかと説く。人間の根源悪、新自由主義の名の下、弱者に「自己責任」背負わせる欺瞞、それに対峙するための「中間団体」の必要性等々。ただ、一点だけ納得できない箇所が。著者は因果論で説明できないものがこの世にある。むしろ、これだけ善の行為をしているのだから幸せになれるなんて傲慢だと述べる。謙虚になれという戒めなら分からぬでもない。だが、人のために尽くして幸福になれないなら、何の救いがあろう。私は因果論を信じる。ただ、誤った哲学を用いないことが前提。2023/07/14

すみの

25
村上春樹著作『ねじまき鳥とクロニクル』登場の数々の人、物、出来事に隠された意味を読み解き、社会システムの中で、資本主義がつくる悪(第2章)、軍国主義がつくる悪(第3章)、能力主義がつくる悪(第4章)を考察。また無自覚になされる悪(第5章)を人は持っているが故に、価値観の異なる相手であっても、その相手の気持ちを理解する努力、自分が相手に与える影響を気付くことは大切。人は自分に内在する悪と向き合い、その悪を受け入れ、悪を意識する、コントロールすることが大切と述べている(第6章)。2023/08/12

おおにし

21
佐藤優が『ねじまき鳥クロニクル』をテキストに大学生相手に行った読書会の記録。この作品はすでに読んで内容を知っていたが、人間の根源悪のカタログであったことを佐藤氏の解説で気づかされた。善人に見える主人公岡田亨の井戸の中で自身の悪の存在に気づき、その後の暴力的行動で内なる悪を受け入れたという解釈には納得できるところがあった。佐藤氏は小説を読むことは自己と対話しながら「自分を知ること」だと述べている。私もねじまき鳥を再読して自分の内なる悪と向き合ってみようかと思う。2023/08/08

カリスマ

16
偶然本屋で見つけて購入。『ねじまき鳥クロニクル』を、「悪」というテーマから考察した講義録。ねじまき鳥について、主題として人が抱える根源的な悪というものがあるんだろうなとぼんやり認識していたが、根源的な悪・内なる悪は人間それぞれが抱えていて、自分のそれに目を背けずに向き合うことが大事だと感じた。他にも様々なシステムの悪を指摘していた。ねじまき鳥の物語になぜノモンハンの描写、綿谷ノボルの背景がなくてはならなかったのかと考えると面白い。岡田がクミコの嫌いなものを買ってきたシーンの解釈の仕方がとても腑に落ちた。2024/01/27

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