感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かごむし
20
ソ連の元大統領という政界の雄と、宗教界の王者との対談。対談であるから気軽に読めるかと思っていたがとんでもなかった。国も文化もイデオロギーも違う二人が、人間の未来をどのように方向づけていくべきなのかという責任感を軸に、激しく響きあう。一言一言に、惰眠をむさぼる魂をゆさぶられる思いがした。対談は20年前のものだが、ペレストロイカ(改革政策)が行われた当時の社会状況や、政治的決断など、ソ連元大統領による歴史の証言であり、現代にも通じる人間の根本に関わる問題がテーマとなっていて、本書が古くなっていないことに驚く。2017/04/09
ロビン
12
ゴルバチョフ元ソ連大統領と池田創価学会名誉会長による対談集。卓越した知性・信念・人間性をもつ両者が、人間、歴史、運命、民主主義、民衆について高い次元で共鳴しながら語り合う本対談は今もなお新鮮である。ペレストロイカ・グラスノスチを行って共産党書記長という絶大な権力を自ら手放し、盟友アイトマートフ氏の予見通りそのために感謝されるどころかむしろ多くの批判中傷や裏切りに遭われた氏は、しかし自分の民主主義者としての信念と決断に寸分の後悔もない、と言い切る。ゴルバチョフ氏の信念と人格に改めて深い感銘を受けた。2022/12/28
あい
5
ソ連崩壊当時のことは、まだ小さかったので覚えていないけれど、これは過去の歴史ではなく、今につながっているのだと強く感じた。ゴルバチョフは仲間の裏切りや周囲の無理解、非難中傷に晒されるが、けっして私情で怒っているのではなく、人間としての道徳、価値というさらに深い基盤に立って怒っているということに感銘した。だからこそ、本当に悔しかったと思う。だが、そこに恨みや嘆きは一切ない。今の人達がまだわからなくても、その先の未来の人達はわかってくれる。どこまでも何があっても信じ抜く、という強い信念を感じる対談集であった。2014/01/28
meirokun
1
「ソビエトの人々は、遅かれ早かれ、精神的眠りから覚醒し、この恐怖心を脱ぎ捨てて、本当に思っていることを声に出して話すことを、そして、無実の罪に苦しむ人を弁護し、体験を語ることを、学ばなければならなかったのです」(p.28)_改革の先駆者ゴルバチョフの漸進的な思想を垣間見ることが出来る一冊。スターリン主義による抑圧からの解放は、ヒューマニティへの希望の槌音となる。レーニン主義の影響、ソルジェニーツィンとの軋轢など、この本でしか知ることの出来ないゴルバチョフの側面も興味深い。2011/10/20
Norimasa Saito
0
電子版で再読。現代史を学べる名著。ゴルバチョフが赤裸々に自身の思いを語りながら池田大作が宇宙的ヒューマニズムの視座から激励をしていく。①善の本質は結合、悪の本質は分断②イデオロギーからリアリズムへ。③人間、自然、宇宙を一体とする普遍性を仏法の「縁起」から見る等2人のしんらいと友情が自由闊達な対話を生む。平等と言ってもそれが抽象的なスローガンであり続けるならばいつかは差別、搾取を隠蔽する装置に堕落していく。池田思想の凄みがある。平等を説くのではなく平等を生きる2人の巨人の魅力は尽きることがない。2020/06/22