内容説明
2009年李箱文学賞受賞作「散歩する者たちの五つの楽しみ」他10篇を収録。
著者等紹介
キムヨンス[キムヨンス]
金衍洙。慶尚北道金泉生まれ。成均館大学英文科卒。1993年『作家世界』夏号に詩を発表、1994年長編小説『仮面を指して歩く』で第三回作家世界文学賞を受賞して、本格的に作家デビュー。長編小説『グッバイ、李箱』で2001年東西文学賞、短編小説集『僕がまだ子供だった頃』で2003年東仁文学賞、短編小説集『僕は幽霊作家です』で2005年大山文学賞、短編小説「月へ行ったコメディアン」で2007年黄順元文学賞、短編小説「散歩する者たちの五つの楽しみ」で2009年李箱文学賞を受賞
松岡雄太[マツオカユウタ]
1978年福岡県京都郡生まれ。関西大学外国語学部教授。九州大学大学院人文科学府博士後期課程修了。博士(文学)。長崎外国語大学外国語学部国際コミュニケーション学科講師、同准教授などを経て、2020年4月より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちえ
43
〈ママとパパは私たちを動物園に捨てようとしたことがあった〉という衝撃的な言葉で始まる「深夜、キリンの言葉」、アメリカから戻ってきた叔母に会いにいく「四月のミ、七月のソ」、亡くなった母親の歌声が聴こえると主張する姉を乗せて深夜高速道路を周回する「ジュセントゥティピニを聴いていたトンネルの夜」が良かった。作者は現代韓国を代表する作家の一人とのこと。訳者後書きで翻訳から出版まで5年間かかったことが書かれていて興味深かい。2021/07/24
かもめ通信
23
李箱文学賞受賞作「散歩する者たちの五つの楽しみ」を含めた11篇の物語を収録したキム・ヨンス(金衍洙)氏のなんとも贅沢で読み応えのある短篇集。恋人のことも、教え子のことも、親のことも、我が子のことも、わかりたくてもわからず、理解しているつもりでも、実は全く解っていない。やっぱり人間は他者を理解することが出来ない生き物なのだろうか。そう思うと少し寂しくなりはするものの、あなたのその気持ちを丸ごと理解することはできなくても、あなたの隣で膝を抱えて同じ時を過ごすことならできるかもしれない。そんな風に思えてもくる。2021/05/07
星落秋風五丈原
22
不思議な感じの短編集でした。出版するまで大変だったみたい。2021/05/08
kibita
16
短編集。韓国を代表する人気作家の一人。方言の訳が関西弁や九州だったりでくだけてるかと思えば主語が誰か混乱したり、私には目が滑る所も。だが表題作、恋人達が暮らした家のトタン屋根に降りしきる雨音で心の昂まりを表現したり、「ママとパパは私たちを動物園に捨てようとしたことがあった」で始まる、双子の姉妹と自閉症の弟と子犬『深夜、キリンの言葉』、眠ろうとすればゾウが現れる不眠症の彼の話『散歩する者たちの五つの楽しみ』がとても良かった。他者を理解することは不可能だが、共に歩くことは出来る。ほのかな希望に向かって。2021/06/05
メルコ
8
2008年から13年にかけて韓国で発表された11編の中短編を収録。「サクラ新年」「四月のミ、七月のソ」「ジュセントゥティピニを聴いていたトンネルの夜」「僕がイングだ」が印象に残る。隣国である韓国の空気や風が微妙なタッチで表現されていて、現代の韓国小説を読むおもしろさを十分堪能できる。あとがきに「82年生まれ、キム・ジヨン」の発売にのっかってようやく刊行できたとあり、韓国小説に追い風でない現実の厳しさも垣間見えた。2023/11/19
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- 和書
- 炎症 〈11-1〉