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内容説明
1991年のソ連崩壊以降、ロシアでは呪術やオカルトへの興味が高まった。本書は、三代にわたる「呪い」に苦しむナターシャというひとりの女性の語りを出発点とした現代ロシアの民族誌である。呪術など信じていなかった人びと―研究者をふくむ―が呪術を信じるようになるプロセス、およびそれに関わる社会的背景を描く。
目次
序章 呪術の「リアリティ」
第1章 呪われたナターシャ―「体験」されてしまった呪術の物語
第2章 世代を超えて伝えられた秘儀
第3章 呪術の「科学」化と無神論の「克服」
第4章 マスメディアが作りだす新たな呪術ネットワーク
第5章 呪術実践を支える学術成果
終章 時空を超えて循環する知識
著者等紹介
藤原潤子[フジワラジュンコ]
1972年生まれ。学術博士(2005年、大阪外国語大学)。東北大学機関研究員、日本学術振興会特別研究員、国立民族学博物館外来研究員などを経て、現在、総合地球環境学研究所上級研究員。専門は文化人類学。主な調査地はロシア北西部および東シベリア。関心領域は、現代ロシアの宗教状況、シベリアのロシア人社会、気候変動の地域社会への影響など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
46
現代のロシア人女性が呪術の「リアリティ」を確信してゆく語りを切り口に、ロシアの呪術を巡る状況を概観してゆく本。体験談や呪術師の実践などを通し、病気などある不幸に際して半信半疑でやってみた呪術が「効いた」という体験がそのリアリティ獲得に繋がることを示します。そこから露わになるのはどんな不合理な命題でも、それを信じたいという欲求があれば合理化の手段を見いだし得るという人間の認識の脆弱性で、「効いたから科学的根拠がある」のような循環論に取り込まれる危険は誰しも持っているということは覚えておきたいと思いました。2025/06/19
あたびー
39
ソビエト時代、呪術(どころか一時は宗教そのものが)否定され、有罪と見なされた。そのために土着の呪術や民間療法は表面上死絶したように見えたが、ソ連崩壊と共に息を吹き返し、今や一部の人々の心の支えになっているだけでなく、マスメディアを通じて新しい時代に入ってさえいる。と言うのが本書のごく大まかな内容である。表題になっている女性は、ソ連時代一般的な若い共産党員として宗教も呪術も無視してきたが、結婚後生活の悩みを呪術師に相談したことをきっかけに、幼少時のあれこれも実は呪いだったのだと気づくことになる。2023/02/18
みや
38
読書会紹介本。呪術を信じていなかったナターシャがリアリティを確信するまでの経緯を軸に、科学による再構築とマスメディアとの関係性を纏めた民俗学論文。①実用知識②伝統文化③自己探求という現代ロシア呪術の区分が分かりやすい。多数派が迷信だと認識しているロシアで、呪術本がベストセラーになる理由も内容も面白かった。かつてソ連は呪術や神を否定することで近代化を推し進めた。呪いを掛けられ続けたことに対して、呪術を掛けた相手以上に呪術の重大性を隠蔽していたソビエト政権を憎むナターシャの感情が、何よりも興味深い。2017/02/15
いちろく
34
紹介していただいた本。現代ロシアにおける呪術を巡るノンフィクション。ミイラ取りがミイラになる感覚。呪術?と半信半疑でページを捲り始めた私が、呪術!と印象が変わりながらページを捲っていて唖然とした。科学全盛の時代、呪術と呼ばれるジャンルは、より衰退していく分野であるが、今でも地域によっては脈づいているのは事実。そして、終章は驚愕であり、この本を最後まで読んできて呪術に掛かった感覚に陥りました。呪術と聞いて笑いますか?コトバだって一種の呪術だと思いませんか?例えば、読書。コトバで、感動したり嫌悪したりね。2016/12/27
Toska
23
ロシア人は概してよく縁起をかつぐ(花を贈る時の本数は必ず奇数、敷居越しに物を受け渡すことを嫌がる等々)。このことを知っていれば、本書の内容もすんなり頭に入るかもしれない。有数の科学大国であり、かつ教会が強い求心力を持つキリスト教国家でありながら、およそ前近代的な呪術が幅を利かせている摩訶不思議な世界。このわけの分からなさがロシアなのだ、というありがちな決めつけに陥らず、個々の事例を丹念に読み解き背景を探ろうとする著者の姿勢に好感を覚える。2025/03/05
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