出版社内容情報
東アジアにおける「法の近世」の幕開け
平和で変化の乏しい「空白の一世紀」とされてきた明代中期。しかしその実態は、固定化した法典『明律』の限界を補うべく、現場の要請に応じた「条例」が次々と編み出される転換点であった。日本の近代刑法にまで繋がる東アジア法文化の源流を描き出す野心的論考。
明清律例は、時代の変化に応じて補訂を重ねながら磨き上げられ、東アジア世界で広く権威をもって受け入れられた。朝鮮や琉球では明律・清律をほぼそのまま継受し、日本でも熊本藩などが明律の研究をもとに藩法を制定していたことは注目すべきである。こうした歴史的経緯を踏まえると、明治初期の刑法が律例を下敷きにしていたことは、決して不思議なことではない。言わば律例とは、近世東アジア世界の国際標準とも言えるような法体系だったのである。ではその法体系はいかにして成立したのだろうか。律例が大きく姿を整えていく時代こそが、本書の注目する明中期である。言うなれば東アジア世界の法体系における「近世」が幕を開けた時代である。
(「序論」より)
◎目次
第一部 明中期における法整備
第一章 明代法制史料の基本整理
第二章 『皇明條法事類纂』の成立事情――条例テキストの問題から考える
第三章 明代『問刑条例』条文形成過程の一類型――参語を引用する事例の検討を通して
第四章 弘治『問刑条例』から万暦『問刑条例』へ――海禁に関する例の「謀叛」から考える
第二部 明中期社会と犯罪
第五章 典型的な犯罪者「無籍之徒」と『問刑条例』の整備
第六章 大運河における司法と犯罪
第七章 朝貢貿易と中国社会――会同館開市に関する規定の法整備過程から見る
第八章 海上密貿易に関する犯罪と法整備
【目次】
序 論
はじめに
一 中国史研究における明中期
二 法制史から見た明中期
三 本書の構成
第一部 明中期における法整備
第一章 明代法制史料の基本整理
はじめに
一 『明律』と『問刑条例』
二 「一依大明律科斷」の原則と例
三 『明律』、『問刑条例』の刑罰
四 例の構造
おわりに
第二章 『皇明條法事類纂』の成立事情
――条例テキストの問題から考える
はじめに
一 『皇明條法事類纂』巻二十九における錯簡
二 重複して収録された事例
おわりに
第三章 明代『問刑条例』条文形成過程の一類型
――参語を引用する事例の検討を通して
はじめに
一 「情重律輕」の事案
二 累犯の事案
三 参語の引用
四 不許妄加参語
五 法律知識の欠如
おわりに
第四章 弘治『問刑条例』から万暦『問刑条例』へ
――海禁に関する例の「謀叛」から考える
はじめに
一 弘治『問刑条例』〔弘V:43:8〕が成立するまで
二 万暦『問刑条例』〔萬V:43:4〕の条文の変化
三 『問刑条例』中の「比照」
四 「謀叛」律と万暦『問刑条例』〔萬V:43:4〕
五 「謀叛」律と海禁
六 万暦『問刑条例』〔萬V:43:4〕とその他の律
おわりに
第二部 明中期社会と犯罪
第五章 典型的な犯罪者「無籍之徒」と『問刑条例』の整備
はじめに
一 明中期の社会風俗
二 『問刑条例』と無籍之徒
三 『問刑条例』条文の成立過程
四 「生理に務めざる(不務生理)」生き方をする人々
おわりに
第六章 大運河における司法と犯罪
はじめに
一 条例に見られる問題の縁取り(フレーミング)
二 大運河における司法行政
三 御史による監察と大運河
おわりに
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