感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
27
ユング主著の1つ。物質をより完全な存在に変える賢者の石を創る技術である錬金術、それを無意識の世界と錬金術の間にパラレルな関係を見出し、人間の意識の成長に結び付けたユング。本書(上巻)は、錬金術と宗教心理の関連を説く第一部と自己の象徴といわれる曼陀羅様の夢、宇宙時計の幻覚等を扱った第二部。豊富な111の図版、ディオニュソス、ニーチェ、「ファウスト」、キリスト教、ゾロアスター教、「コーラン」等々、多岐に亘る資料を引きながらの思索・論考。難解ながらも興味ある分野であるだけに読み耽ることが出来た。2013/11/27
呼戯人
12
錬金術が化学の前身であったのと同様に錬金術の物質の変容過程の描き方が、深層心理の変容の過程とパラレルな関係にあるという発見は、前代未聞の恐るべき慧眼だった。この発見には汲めども尽きぬインスピレーションの泉が滾々と湧き出ていて、なんともそれ自体非常に神秘的な出来事である。心理の深層には物質の世界が広がっていて、心の奥底の物質との平行関係を論じるくだりは、まさにスピノザ哲学の心身平行論に通じる論点が含まれている。生物の進化はまるで隠された意志によって実現されているかのような心理と物質の交合関係があるかのようだ2016/10/16
マウリツィウス
6
ユングの心理学理論による錬金術解釈の隠喩化はイエス前提を賢者の石へと帰することで記号論手法にて具象化させる。可視化世界は表象を幻視していきボルヘスの類似様式を収束させていく。哲学思想の実在化領域の根幹はギリシャ異教を起源とし、ユングを初めとした宗教抽象異化論は文学寓話を逸脱することで言語の遊戯性を彷徨う。彼の神秘主義普遍人類学は継承され主流となることで変革を施した。多様万能理論の及ぶ先は現代における常軌に定住し宗教学の支配を推進、ポストモダニズム形成は急成長し異端概念はその名を取り払われ浸透し定式化する。
Rolf(ロルフ)
0
古本屋で購入。2024/11/24