内容説明
詩人はいつから詩人になるのだろう。心の庭にふりつもる言葉の落葉からおのずと立ちあらわれる美しくもしなやかな「詩人の魂」。
目次
十五歳の桃源郷
私がものを書きはじめた頃
一冊だけのマラルメ
かもめの水兵さん
胡瓜の舟
年を重ねる
宛先不明
ミシガンの休日
「カレワラ」の国を訪ねて
フィヨルドの国にて〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
12
詩人を形作るもの、原風景、詩人の言葉を形作る原初の風景とでもいうべきもの。〈水稲が生育するにつれて、まばらな黄緑から密生したエメラルドグリーンに、そして蛙の大群をひそませた濃緑に色を変え、やがて穂を重く垂れながら黄ばんでいくのを私は見た。〉〈そう、そのころ、すべては新鮮で、めざましく、美しかった。〉まさしくそれは失われていることによって、時間というものの流れの外に免れていることによって、桃源郷なのだ。川という水によって隔たれていて、そこへと至る橋は途中で切れていて、もう二度と辿り着くことの出来ない桃源郷。2023/03/17
あ げ こ
9
その内部に息づいているもの、その発想の源泉とも言うべきものを読んでいる、と言う感覚。それは夢の中でのみ遭遇し得る類の豊かさや自在さを備え。けれど確かに存在するものの明瞭さをも備え。あまりにも美しく、深遠な広がり。手応えがある。触れたのだと言う。決して脆くはない。繊細ではあるのだけれど。硬く、崩れ落ちぬ強さがあるように思う。夢のような美しさを。あり得ぬようなそこが、確かに存在していた事を。克明に伝える言葉。物事も、自分自身も、平易に、ぼかす所なく語っていて、凄く好ましい。意外な近しさを感じる事もしばしば。2017/01/26
せがた三四郎
2
氏の翻訳からは覗うことのできないユーモラスな一面を見ることができる。語り口は軽妙であるが、品のよさを失ってはおらず、ところどころ透徹した眼が開かれる。氏と同じ詩人である西脇順三郎について書かれた項が興味深かった。2011/05/15
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