内容説明
「アール・ブリュット」の名付け親による文化的芸術への徹底批判。制度的な文化概念を根底から覆し、真に自由な創造へと向かう痛快なテクスト。フランス現代思想の知られざる原点ともいえる比類なき著作、初の邦訳。
目次
文化は人を窒息させる
付属資料 無作法の居場所(一九六七年パリ装飾美術館での展覧会カタログの序文)
著者等紹介
デュビュッフェ,ジャン[デュビュッフェ,ジャン] [Dubuffet,Jean]
1901年生まれ。フランスの画家。ル・アーブルのワイン商の家に生まれる。ほぼ独学で絵画制作をはじめ、40歳を過ぎて画家に専念しアンフォルメルの先駆けとなる作品を発表。「生(き)の芸術」を意味する「アール・ブリュット」という言葉を生み出し、作品の収集も始める。1976年スイス・ローザンヌにアール・ブリュット・コレクションを開設。文筆家でもあり多数の文章を残している。1985年没
杉村昌昭[スギムラマサアキ]
1945年生まれ。名古屋大学大学院文学研究科修士課程修了(仏文学専攻)。現在、龍谷大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kyohei Matsumoto
4
デュビュッフェの主張はよくわかる。文化というものによって本来個人の生の衝動から行われるべき芸術が全く価値を持たず、その文化の流れに乗るものだけが価値を受けると。しかし、なぜこの60年代の主張が流布せずに、強い文化の支配を受けて、個人の創造活動が押さえつけられたのか。それは新自由主義という、個人主義ではなく、自己責任を言い渡す風潮のせいだろうと訳者はいう。確かにそうだと思う。この本の内容はこれから仕事がAIだったり人口減少で適正化されていくなかでようやく実現していくだろう。実現しなければ。2021/03/07
Yoshi
1
現状外に出られない中、文化を大事に、お金を政府は文化に払おう的なスローガンをよく見かけるようになったのにとても違和感を感じていたのだが、その理由は文化とは距離を持つ芸術が根源的な芸術なのだと自分でも思い込んでいる節があるのかと思い通読した。 支配からの脱却はいつの時代も刺激的であって、過去に反抗的な意味合いを持った人たちが力を持ち文化、文化と言うようになる様を真っ向から否定しているようにも思え胸がすく本だった。 更にこれらを同じく内包するのが文化であり、そこから如何に外に出るかもこれからの課題と思いつつ。2021/04/12