内容説明
思弁的実在論とともに現代哲学の新潮流をなすオブジェクト指向存在論、その第一人者による入門書の決定版。
目次
第1章 解体と埋却
第2章 感覚的対象
第3章 実在的対象
第4章 さらにハイデガーについて
第5章 間接因果
第6章 ハイデガーの四方界
第7章 新しい四方界
第8章 様々な水準と魂
第9章 存在地誌
第10章 思弁的実在論
著者等紹介
ハーマン,グレアム[ハーマン,グレアム] [Harman,Graham]
1968年アイオワ州生まれ。アメリカン大学カイロ校教授を経て、現在、南カリフォルニア建築大学特別教授(Distinguished Professor)を務める。現代の大陸哲学の新しい潮流である思弁的実在論およびオブジェクト指向存在論の代表的論者
岡嶋隆佑[オカジマリュウスケ]
1987年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程在学中。同研究科助教(有期・研究推奨)
山下智弘[ヤマシタトモヒロ]
1991年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程在学中。日本学術振興会特別研究員(DC)
鈴木優花[スズキユウカ]
1989年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程在学中
石井雅巳[イシイマサミ]
1990年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科哲学専攻修士課程修了。津和野町役場町長付および島根県立大学北東アジア地域研究センター市民研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
内島菫
30
文章自体読みやすいが、本書をわかりやすくしている最大の要素は、ハーマンの明快で痒いところに手が届くような論点の捉え方だろう。それはどこか魅力的な強引さ(強度)を持って、「対象」が指すものを、関係という複数性と無生物という偏在性にまで押し広げる。にもかかわらず、物理的な唯物性やこころを軸とした主客問題に惑わされることなく、あくまでオブジェクト指向的な哲学として線引きをする。人間と猫が違うように思えるのは、人間と猫の存在者としての種類の違いによるのではなく、2017/10/18
34
22
ぼくにはこれはフレーゲの挫折を存在論に置き換えたものにしか見えない(フレーゲの対象はとても引っ込み思案なのだ)。あるいは前期ウィトゲンシュタインの挫折を、と言ってもいい。大陸的な視点では、この挫折は命題を認識論の中心的なカテゴリーとすること(の要請)からの必然的な帰結として理解できる。つまり対象の対象性と主体の主体性が退隠するのは、カテゴリーの越権使用がもたらす誤謬推理のせいだ、と。しかし悟性のカテゴリーは(あるいは命題の論理形式は、自由は、存在は)どこからやってくるのか。これがカント以後の哲学の問いだ。2018/02/03
またの名
12
略したくないけど略すとOOO。フッサールが見出した意識に対して現れる感覚的対象とその感覚的性質、それらの背後にハイデガーが認めた隠退してる実在的対象、隠れた対象ごとに異なる個々の特異性を示す実在的性質。この四項を弄くり回して目指す新しい哲学。有機的関係性のない隠退したモノ達の間で生じるどんな関係も、関わるモノを翻訳歪曲してしまうため、最も本質っぽい実在的対象と実在的性質でさえ予め密接な繋がりがなく「時折しか生じないアドホックな関係」のみを持つと議論。認識論的な物と現れの分裂は人間だけの特権ですらなくなる。2018/09/27
渡邊利道
5
実在的対象・実在的性質・感覚的対象・感覚的性質という四方構造で世界を存在論的に把握し直す。フッサールの「志向性」「内在的対象性」、ハイデガーの「道具分析」と「四方界」、ホワイトヘッドの汎心論などを批判的に、まるでDJのように自由にリミックスして張り合わせることで議論を深めていく平面的なスタイルで展開する。いわゆるギリシア哲学の「存在の隠蔽」を逆にプラトンとアリストテレスによって「哲学」が創始されたのだとする前フリの議論からなかなか面白い。メイヤスーやラトゥールとの差異も明快で大変わかりやすかった。2017/12/02
misty
4
この本は決して優しくないと思う。「四方対象」の実在的対象、実在的性質、感覚的対象、感覚的性質のそれぞれというより、この四構造が織り成すぜんぶで10の関係性が宇宙を構成しており、その関係の探求が……といった後半はただただ読み進めていくだけだった。しかしさすがは著名なOOO、読み終えたらハーマンの議論についてあれこれ自由に考える楽しみが出来た。実在はことごとく「退隠」しているという表現が面白い。貴重な最新現代思想でした。2018/02/24