出版社内容情報
スティーブ・ジョブズでも、ビル・ゲイツでもない。
孫正義が「世界で最も尊敬する人」と語ったのは、ほかでもない――父・孫三憲(そん・みつのり)だった。
「ソフトバンクを創業してから、いつも思いよった。本当の一代目は親父よ。俺が創業者ではない、俺は一・五代目だと、いつも言いよった」(本文より)
本書は、かつてないほどのスケールで描かれる、ひとりの父とその息子の物語である。
裸一貫から焼酎の行商を始め、パチンコ店経営で財を築きあげた孫三憲。
その背中を見て育ち、AI革命で世界を変える孫正義。
彼らの血脈、思想、そして魂が交差する、熱き記録。
在日コリアンとして差別と貧困に立ち向かいながらも、常に「負けじ魂」を燃やし抜いた父・三憲。
彼の姿から、息子・正義はビジネスの本質を学び、挑戦者としての誇りを継承していく。
「お前は天才だ」「世界一になれる」。
何度もそう言い続け、惜しみなく愛を注ぎ続けた父の存在は、ソフトバンクグループ創業の根幹を支え、経営理念「情報革命で人々を幸せに」にも影響を与えていた。
そして父が病に斃れた、最期のときを迎える日々――
末期がんと診断されても、「まだ五年は生きたい」「まだやりたいことがある」と語る父に、息子はあらゆる手段を尽くして東京へと転院させた。
医師も驚いたその生命力。だが、訪れた別れのとき。
「俺は一・五代目だ。本当の一代目は親父よ」と号泣する正義の姿に、父への深い敬愛と、日本という国で生き抜いてきた在日の矜持がにじむ。
作家・井上篤夫が綿密な取材と筆力で描き出したのは、ひとりの男の生き様と、それを受け継いだ男の覚悟。
それは、家族とは何か。血とは何か。信念とは何か。
読む者の胸に問いかけ、深い余韻を残す。
これは、孫正義の原点を解き明かす物語であり、
「一・五代目」として生きることの意味を私たちに示すノンフィクションである。
【目次】