内容説明
土佐沖に広がる夏の青空の下、大和は盛大に飛沫を巻き上げながら航行していた。その飛行甲板の上には、それぞれ10機ずつの零戦、九九艦爆、九七艦攻が、整備員たちの手によって次々と運び込まれ、発艦準備を行っていた。「なんともいえない光景だな」大和艦長として防空指揮所に立つ黛が、甲板上の作業を眺めながら呟いた。傍らに立っていた航海長が、片方の眉を上げながら言った。「まったく、馬鹿げていますよ。これだけ巨大な空母―いや、軍艦は、世界広しといえども、我が海軍にしか存在しないのですから」黛はぎこちなく頷いた。この大和が戦艦として生まれなかったことに対し、複雑な心境を抱いていることに変わりはなかった。
著者等紹介
内田弘樹[ウチダヒロキ]
1980年愛知県生まれ。中京大学卒。中学生の時に買った、とある仮想戦記を読んで以来、軍事の世界にのめり込み、その帰結として作家の道を志す。最貧な軍隊をこよなく愛し、日独伊以外の枢軸国(東欧諸国など)の悲哀に思いを馳せる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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maddroid02
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戦艦大和なんていらなかったんや、最初から空母だったんや!という仮想の元に展開する空母機動艦隊決戦。実際に空母になった信濃のできがよかったという話は聞かないので、最初から手間暇かけて建造した大和型空母があったらあるいは……という発想はなかなかおもしろい。戦艦大和もそうだけど、空母大和もよくもまあというこんなものを作ったという気にさせられる。2014/10/10
ねんこさん
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いくらモスクワ前面ドイツとで戦っているからと言っても、当時の陸軍の戦力で日ソ開戦は不味いだろうと言う気がする。兵器の魔改造による戦術レベルの改変こそがこの作者の真骨頂なので、戦略レベルで物語を俯瞰してはいけないのかも知れない。2009/08/16
Meistersinger
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好きだなぁ>装甲空母 さて史実と変えてくるのは、どの辺だろう?2009/06/06
いちよんに
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空母になった大和が見たい、が動機でいろいろな史実の改変はもう多少の無理筋でも面白けりゃいいんだという感じ。2018/02/02