内容説明
このときようやく防空指揮所でもその二機の大型機の胴体に日の丸がかがやいているのを見て仰天した。日本機であることにはまちがいない。日本はいつ4発の大型爆撃機をつくったのか?だが、それを深く考えている余裕はなかった。両都市を防衛する責任をもつ戦闘機基地ではただちに防空警報が出され、スクランブルのかかった戦闘機が五月雨式に飛び上がり、総数それぞれ100機に達した。戦闘機群は必死に急上昇した。しかしそのときには日本爆撃機の爆弾倉が開き、爆弾が鳥の糞のように撤き散らされた。これらはすべて800キロ爆弾だった。数分で爆弾庫を空にすると、日本爆撃機は急上昇に移り、寸前まで接近してきていた米軍戦闘機の鼻面から見るまに遠ざかった。
著者等紹介
田中光二[タナカコウジ]
昭和16年2月14日、京城生まれ。早稲田大学第二文学部卒。『黄金の罠』で第1回吉川英治文学新人賞受賞
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