内容説明
「人の一生は幸不幸がもつれ合ってできている」―下谷の下級武士の娘・長沼栄津は、隣家の長男・水嶋穣太郎に思いを寄せるが、良い噂を聞かない國木田義三のもとへ嫁いだ。大地震や流行り病に襲われるも、武家の誇りを胸に歩む栄津だが…“着物始末暦”シリーズの著者が、波乱の時代を生きる女の人生を描き切った、人情あふれる傑作時代小説。
著者等紹介
中島要[ナカジマカナメ]
早稲田大学教育学部卒業。2008年、「素見(ひやかし)」で第2回小説宝石新人賞を受賞。10年、『刀圭』で単行本デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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時代小説大好き本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のびすけ
21
御徒の家の娘・栄津の一代記。長沼家での娘時代から、國木田家の妻となり、2人の子供の母となり、2人の孫の祖母となる。容姿は十人並みで、苦労も不運もあったけど、それなりの幸せも掴んだ。淡々とした物語ではあったけど、栄津の人柄に惹き付けられるものがあり一気読み。おたふく顔の栄津さんだけど、表紙の絵がとても素敵。2020/09/12
れんこ
13
幕末、江戸の御徒の家に生まれた女性・栄津さんの物語。厳しい台所事情でありながらも、武家としての見栄やプライドを保つ。強くなりますよね。2024/04/04
ひさか
13
月刊ジェイノベル2015年3月号:資乏くじ、6月号:船出、9月号:悲雨、12月号:紅の色、2016年3月号:ふところ、6月号:神無月、9月号:江戸の土、の7つの連作短編を2017年4月実業之日本社から刊行。2020年8月実業之日本社文庫化。江戸の下級武士の娘、栄津の娘から妻、母となる17歳から55歳までの一代記。幕末から明治になるまでの暮らしの変遷が興味深く、余韻があるストーリーが心地よい。2020/10/12
きょう
11
17歳、21歳、23歳、28歳、32歳、42歳、55歳。制度がずっと続くと思えばこそ、栄津の周りの人達もそれぞれに愚痴ったり泣いたりしながら分の弁えの中で務めていますが、ご一新と言われ身分が変わってしまう幕末に初老を迎えた栄津は、さあどんな後半生を過ごしたのかな~。武家の柵が無くなったのに、明治の旧民法を思い出すと…。図太くね、栄津。娘の所まで、汽車で行けるようになる日がきますよ。2022/07/08
なおお
11
下級武士の娘えつ。決して恵まれた環境ではないが、周りの人々に助けられたり、振り回されたり、「お話」ではないリアルな半生記。本当に当時の下級武家の娘、妻はこんなだったんだろうなと思う。面白く一気に読んでしまった。2021/09/18