出版社内容情報
東京から新幹線で北へ向かう男女5人それぞれの行先で待つものは――。面倒だけれど愛おしい「ふるさと」をめぐる珠玉の短編集。
内容説明
面倒だけれど愛おしい「ふるさと」をめぐる感動作―郡山、仙台、花巻…桜前線が日本列島を北上する4月、新幹線で北へ向かう男女5人それぞれの行く先で待つものは―。実家との確執、地元への愛着、生をつなぐこと、喪うこと…複雑にからまり揺れる想いと、ふるさとでの出会いをあざやかな筆致で描く。注目の気鋭作家が丁寧に紡いだ、心のひだの奥底まで沁みこんでくる「はじまり」の物語。
著者等紹介
彩瀬まる[アヤセマル]
1986年千葉県生まれ。上智大学文学部卒業後、会社勤務を経て2010年「花に眩む」で第9回「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞。2012年、東日本大震災の被災記『暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出』を発表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
600
とてもいい読書体験だった。連作短編集の共通項は「故郷」「新幹線」「春のお花」そしてメインの「新幹線の売り子嬢」。わたしも去年、京都からの帰りにビールの買い足しと息子用カツサンド購入させていただいたっけな。その直後、東海道新幹線では売り子嬢廃止と聞いて愕然とした覚えが。『菜の花の家』がダントツ。そして『ハクモクレン』中の宮沢賢治記念館、高校時代に友人との旅の途中、行ったことあるぞって記憶がさぁっと蘇って読書の威力を思い知る。オススメ。2024/02/19
mae.dat
295
終話表題作を含む5話短篇。季節柄も丁度好い頃だよ( ¨̮ )。東日本大地震の記憶、爪痕が残る頃に執筆されたのかぁ。最終話だけ趣を異としますが、基本的には桜前線を追いかける様に北上する東北新幹線駅が舞台でね。郷里への帰省の話なんかになっています。章タイトルも花に纏わるものになっていて好い感じですよ。絆もあるし確執の様なものもありますが結局は家族なんすねぇ。最終話は新幹線の車内販売をするさくらさんの話なんですが、それ迄の新幹線車内で必ず往来していたワゴンを押していたのはさくらさんって事だったのね。やるなぁ。2025/03/25
さてさて
288
『故郷とは必ずしも気安い場所ではないのだろう。お土産を両手に持って勇んで帰る人もいれば、喧嘩をしにいく人も、帰るのが気まずい人もいるに違いない』というそれぞれの主人公達の『ふるさと』。この作品に登場した主人公達にとってそれぞれが目的地とした『ふるさと』も、やはり単純に気安く訪れる場所ではありませんでした。『向かう先に生きた他人がいる限り、関係性は四季を越える桜の木のように花盛りと冬枯れを繰り返し、どちらか一方では固まらない』という先に描かれる物語は、そんな『ふるさと』が見せる一つの姿だったのだと思います。2022/02/21
しんたろー
211
「東北新幹線」と「花」をモチーフにして描かれた5つの短編集は今まで読んだ彩瀬さん6作中で、一番ホッコリした。宇都宮から始まって郡山、仙台、花巻と違う主人公によって「ふるさと」を文字通り紹介する部分もあって観光的な気分も味わえたが、それ以上に心情的な拠り所としての「場所」を巧く表現していて共感できる話が多かった。単なる田舎話に終わらず「フクシマ」の実情についても自然体で語られており好感が持てた。5話目は予想通り、車内販売の女性が主人公になって纏めていたのも嬉しい。「明日も頑張ろう!」と思わせてくれる良作👍2019/03/05
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
183
春は恋の季節。はじまりの季節。一筋の寂しさ、心もとなさを胸の隅に感じながら、桜の淡い色とともにわくわくと胸ときめかす。 東北新幹線に乗って北上する5人のそれぞれの家族の話を、春らしく花に絡めて描く短編集。故郷のあたたかさ、郷愁。そして同時に感じる煩わしさ。誰よりも近しいからかけがえなくて、疎ましい。でも大切にできる人でありたい、いつも。新幹線や高速バスにひとり乗って誰かのもとに行くのは切なくて嬉しくてさみしい。おばあちゃんになっても、誰かのためにワンピースを着れたら。2019/03/24