出版社内容情報
オリンピックが全てなのか!? 「スポーツ省」が管理・育成するエリートランナーの孤独、そして飛翔を圧倒的な筆致で描く!
内容説明
国家に管理・育成されるアスリートの苦悩。オリンピック柔道金メダルを花道に引退した沢居弘人は、スポーツ省から特別強化指定選手「SA」の高校生・仲島雄平のサポートを命じられる。陸上長距離で日本記録を更新する反面、メンタルが弱い仲島の意識改革が狙いだった。次回五輪での金メダル倍増計画を国策に掲げ、アスリートを管理育成する体制に違和感を覚えながら、仲島は練習に励むが…。
著者等紹介
堂場瞬一[ドウバシュンイチ]
1963年生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年『8年』で第13回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。警察小説とスポーツ小説の両ジャンルを軸に、意欲的に多数の作品を発表している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hitoshi Mita
60
東京オリンピックまでもう4年!この本を読むと考えさせられる。ナショナリズム、オリンピックって。確かに戦争なのかもしれない。国の威信や思惑などなかったとはいえない。選手は初めは純粋にスポーツが好きで楽しんでいたのかもしれないが頂上を目指す時に一人ではやっていけない。スポーツはお金がかかる。それもトップアスリートとなれば尚更だろう。この本は純粋に楽しむことと国の思惑などを改めて考えさせられる。勝つこととは。東京オリンピックに向けて今でも戦い続ける人達がいることを思うと楽しんでると聞いて見たくなる。2016/12/29
カブ
51
陸上長距離の特別強化指定選手の仲島と仲島をサポート(監視?)する、金メダリスト沢居。アスリートを管理するさまは、籠の鳥状態。読んでいるうちに息苦しさを感じ、自らの目標まで管理される仲島が大空へ羽ばたくのを期待しながら読んだ。2017/09/05
マドロス
45
スポーツとは何なのか、その根源に迫る。作中に描かれるような「金メダル倍増計画」がなくても、この国には「日の丸を背負う」という考えがある。それは、多かれ少なかれ、選手を縛っているだろうことは容易に想像できる。でも、国の代表に勝ってもらいたいと思う気持ちもあり、スポーツ選手が「自由」に勝負するというのは本当に難しいことだと考えさせられた。2016/12/29
Walhalla
43
国家に管理されたアスリートの苦悩を描いた作品でした。 スポーツというのは、その人にとってどのような意味を持つのか、あまり類のないタイプの作品で興味深かったです。 さて、国際大会だと、どうしても自国の選手が勝つのを期待してしまいますが、この作品に描かれている出場国の枠に捉われない新しいタイプの大会というのも魅力的ですね。誰かに管理された道であっても、自分の意思で選んだ道であっても、見る側としては最高のパフォーマンスを発揮できる試合を見たいですね。2020/09/16
ASnowyHeron
42
感動を与えてくれるアスリートの活躍が、国策で作られたものであることは悲しい限りだ。ここはアスリートの感情を操り、人間の尊厳を無視した世界だった。そうせざる得ない事情はあるのだろうけど、個室にまで監視カメラがある中で、心が休まる時間はあるのだろうか。スポーツの大会を見る目が変わる。それでも最後まで目が離せない作品だった。2017/07/09