内容説明
低迷に喘ぎ、売却が決定した名門球団“スターズ”。本拠地でのシーズン最終戦、プロ初先発のルーキー有原はノーヒットノーランのまま9回を迎えた。スターズのリードは1点。快挙達成へのアウト3つを奪うため、ルーキーが綱渡りで投じる20球を巡り、両軍選手や監督ほか関係者の思惑を、1球ごとに語り手を替えて濃密に描き出す。堂場野球小説の真骨頂、渾身の書き下ろし!
著者等紹介
堂場瞬一[ドウバシュンイチ]
1963年生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年『8年』で第13回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
225
帯にもあるとおり、まさしく「堂場瞬一の底力」を見せていただきました。ルーキーのピッチャーがノーヒッターを達成できるか、できないかまでの最終イニング9回における20球のドラマです。わずか20球しかない‘尺’でよくもこんなに素敵な人間ドラマが書けるもんだなぁとひたすら尊敬します。ルーキーの緊張感あふれるピッチングを見守る様々な人々の思いを、あらゆる視点で描いていて、ただのスポ根モノではおさまらないステキな作品です。『ラストダンス』からのつながりもファンにはニヤリとさせられます。野球好きにはたまらない逸品です。2013/11/04
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
122
野球はある意味心理劇だと思う。一球ごとにバッテリーとバッターとの駆け引きがあって、観客にもそれを想像する楽しみが与えられている。だが、小説でこの手法には驚いた。本拠地での最終戦。既に順位も決定し弛緩した空気が支配している。無名の高卒ルーキーの初先発には特筆すべきものはなかった。ところが、誰一人想像しなかったドラマが起きる。ノーヒットノーランのまま回は9回。あとアウト3つで快挙達成だ。最終回のマウンドで投じられた20球。両軍選手や監督、関係者の心情を1球ごとに視点を変えて緻密に描く。前代未聞の心理ドラマ。2016/05/03
ゴンゾウ@新潮部
114
こんな野球小説を読んだことがなかった。シリーズ最終戦、かつての名門球団。無名の新人投手がノーヒットノーランをかけて最終回のマウンドに立つ。最後のイニングを見守る様々な人物の視点でゲームが語られる。たかが野球、されど野球。野球に取り憑かれた者たちの野球愛が語られている。よかった!2018/09/26
ユザキ部長
96
遅延行為すぎる(笑)何度もマウンドを慣らしロンジンバッグを触る。高卒ルーキー初先発はこれまでノーヒットノーラン。9回を迎える。球種はほぼストレート。本人だってどこに向かうかわからない荒れ球はストレートの四球に死球だらけ。自滅ギリギリ。ここまでくると応援も野次もなく球場全員固唾を飲む。さて?ラスト一球は俺の生き様になれるのか?2017/10/27
Rin
85
読んでいる私まで固く、不安な気持ちに苛まれそうになってくる。そして大丈夫多から!とピッチャー有原に言ってあげたくなる。彼のチームは「スターズ」。身売りの決定したチームでのノーヒットノーランがかかっている。そんな中での20球に、様々な人の思いが語られていく。立場が違えば見え方も違う。読むごとに考え方が揺らいでしまう。それでも野球の熱と魅力はしっかり伝わってくる。きっと、一球で変わるものもある。ひとつの試合で価値観が変わることだってあるって思える。個人的に「ラストダンス」の二人に再開できたのも嬉しかったです。2016/11/25