内容説明
幕末屈指の洋学者でありながら、衝鋒隊を率いて各地で反乱を起こし、官軍を震撼させた古屋佐久左衛門の戦いを描く表題作、新選組局長・近藤勇の処刑とその後の遺体の行方にまつわる騒動を活写した「勇の首」―そのほか、赤報隊、天狗党、振武軍、撤兵隊、遊撃隊など、幕末維新を舞台に、義に殉じ、最後まで屈服しなかった男たちの凄絶な生き様を描く全八編。
著者等紹介
東郷隆[トウゴウリュウ]
1951年神奈川県横浜市生まれ。国学院大学卒業。同大学博物館学研究助手、編集者を経て作家に。94年に『大砲松』で第15回吉川英治文学新人賞を受賞。2004年『狙うて候―銃豪村田経芳の生涯』で第23回新田次郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スー
14
幕府に殉じた男達の短編集です。伊庭八郎以外知らない人物ばかりで、まだまだ勉強不足を痛感しました。それにしても幕臣や大名達の不甲斐なさ風見鶏の様な態度に辟易してしまいます。最後まで意地を貫いたのは身分の低い者ばかりだったように感じてしまうぐらいです。幕末にはまだまだ知らない魅力的な人物が沢山いるんでしょうね、もっともっと本を読まねば。2018/01/24
桜もち
13
解説まで読んで、じーんと来た。どれだけ不利になろうと節を曲げず、大義のために殉じた名もなき男たちの事跡をおさめたオムニバス。渋沢栄一の養子、平九郎が落武者となって切腹した時の辞世の句 《惜しまるる時ちりてこそ世の中の 人も人なれ花もはななれ》 その時わずか22歳…判官びいきではないが滅ぶ者の美しさなのか、どうしても旧幕府側に心が寄せられる。2015/05/15
Yukihiro Nishino
12
幕末において賊軍とされ敗れ去っていった男たちの物語。地元の名も出てきて興味深かった。作品のあとがきにおいて、ある維新の功労者が、なぜ長生きできたのかを問われたとき、「殺されなかったからだ」という旨の句を詠んだという記述があるが、幕末という時代は、皆が自分の信念や義のために命がけで戦った大変な時代だったのだろう。2016/06/21
yamakujira
4
「雪中の死」で赤報隊の金原忠蔵、「勇の首」で勇の婿養子の近藤勇五郎、「屏風の陰」で天狗争乱に加わった中山範之助、「血痕」で飯能戦争から逃げ損ねた渋沢平九郎、「百戦に弛まず」と「我餓狼と化す」で古屋佐久左衛門、「下総市川宿の戦い」で撤兵隊の江原鋳三郎、「坐視に堪えず」で遊撃隊の林忠祟と、幕末の敗者をえがく。渋沢一族の成一郎や栄一と平九郎、旧幕軍の指揮官として大鳥圭介と佐久左衛門、遊撃隊で肩を並べた人見と伊庭と林忠祟、生死は運命のいたずらとしか思えない。佐久左衛門の弟が高松凌雲なのかぁ。 (★★★☆☆)2018/06/05
北之庄
2
久々に味わう幕末戊辰戦争を描く作品。この時代といえば新撰組・上野彰義隊そして会津白虎隊辺りが有名ですが、それ以外の佐幕派諸隊(赤報隊、遊撃隊衝鋒隊…)が描かれています。大多数の旗本直参衆が薩長を中心とした西軍に雪崩を打って与する中、決して徳川家の恩顧に充分浴した訳でもない男たちが、その意地を賭けて立ち向かう物語。そして近藤勇・土方歳三・河井継之助・勝安房守等の千両役者達は、本作品では端役に廻っています。時代錯誤の奴らと笑うなかれ、桜花も侍も散り際こそが最も美しい。いとあわれな短編集。泣かせます。2012/07/27